2011年版国防報告書の内容を説明する楊念祖・国防部副部長。(中央社)
中華民国国防部はさきごろ、2011年版の国防報告書を発表。国防部では、「台湾海峡の緊張は緩和に向かい、軍事衝突の可能性は下がっているものの、中共の台湾に対する軍事的威嚇と併呑の目標に変化はない」として、軍事バランスが中国大陸側に傾く中、中華民国台湾が将来直面する軍事的脅威は日増しに深刻になりつつあると警戒感をあらわにした。
報告では、中共は台湾に対する大規模な火力攻撃能力および重点的な海と空の封鎖能力をすでに備え、合同威嚇、合同封鎖、合同攻撃、合同上陸、日米の介入阻止などの大規模な作戦能力を有していると指摘した。合同封鎖は第一列島線(九州から沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオへと続くライン)の西側が対象、合同上陸は澎湖など離島の奪取と台湾本島への一定の攻撃と説明している。
国防部は、中共は水陸両用の運輸設備が不足している状況下、台湾本島への全面的侵略能力はまだ有しておらず、現段階で台湾に対して可能なのは軍事的威嚇、離島奪取を含む局部的封鎖および攻撃だと予測した。しかし、台湾本島奪取の力を備えた場合、もしくは情勢が切迫した場合は直接台湾本島攻略に乗り出し、最終的な政治目標を達成する可能性もあるとしている。
軍事力自体について国防部は、中共軍約230万人は中華民国国軍約27万人の10倍で、弾道ミサイルや潜水艦の面でも中共が絶対的優位に立つ他、陸海空の全体的戦力も徐々に中共有利に傾いていると認めた。今年の軍事予算については、中共が明らかにしているのは770億ドルだが、米国防総省は別の予算項目に隠された経費も合わせると2~3倍だと見ていると指摘し、中共の軍事予算は中華民国の国防予算約90億ドルと比べて表面上9倍、実質的には21倍だと推測した。
国防部では、中共が台湾の対岸に配備する戦術ミサイルは1000基超(1400基超保有)で、台湾に向けた戦備を継続的に強化している点などから見て、「独立を阻止して統一を促す」、「武力で統一を促す」との考え方を特に調整していないことは明らかだと結論付けた。