総統府は20日、中華民国「国家人権報告」を発表した。これは中華民国(台湾)における人権保障の歩みを、国際社会の流れに合わせる第一歩として作成され、馬英九総統が3年前に採択した国際人権規約を国内で法制化することを目的としている。総統府によると、年内に英語版を作成するとともに、国際審査会を開催し、台湾の人権保障の取り組みをを国際社会の流れに組み入れる方針だ。
馬総統は、報告書の発表にあたり、人権の考え方は時代とともに進歩していくと指摘、このため国内の人権保障の取り組みを国際社会の流れと同調させると同時に、引き続き政府が努力を重ねて人権の保障を実現していくとの決意を述べた。馬総統はまた、年1回のペースで報告書をまとめる方針を示した。
この「国家人権報告」は3冊に分かれ、全文20万字以上、200ページ余のボリュームとなっている。内容は生存など基本的人権の保障、人工中絶、職場の男女比率、障がい者の労働力状況、外国人労働者の権益保護などとなっている。
総統府は、これは中華民国が、国連で1966年に採択された「市民的及び政治的権利に関する国際規約」と「経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約」という国際人権規約の内容と形式に基づいてまとめた、初めての国家人権報告だと説明している。人権保障に関し国内でもそれぞれ違った見方があるかも知れないが、報告書作成を国際社会の流れに歩調を合わせる第一歩とし、馬総統が3年前に採択した国際人権規約を国内で法制化するとしている。
総統府によると、2つの国際条約から成る国際人権規約は、国際人権保障の最も重要な法典。中華民国は1971年に国連での代表権を失ったものの、人権を重んじた国家統治の理念を実現し、人権保障のレベルを向上させ、国際社会の流れと歩みを合わせるため、馬総統が2009年4月に国際人権規約施行法を公布、同年12月10日に施行。同日に設立された蕭万長副総統を招集人とする人権諮問委員会が、82回の審査・会議を経て、「国家人権報告」をまとめた。なお、2009年5月14日に署名した批准書を国連事務局に預託したが、現時点でまだ受理されていない。これに関し馬総統は、批准書を国連事務局が受理しているかどうかにかかわらず、すでに国内法の一部として効力を持っていると指摘、「わが国の人権保護の取り組みを世界と歩調を合わせるため努力していく」との決意を語った。
国際人権規約の施行法は、「政府は人権に関する報告制度を整備し、同規約が規定する人権保障に関する取り組みの成果をチェックし、国際的な規範に合致させること」と定めている。