台湾東部、台東県関山鎮の「嘉賓旅社」は70年以上の歴史を持つ日本建築の宿泊施設で、同鎮公所(役場)による道路の幅員拡張計画のため取り壊されることが決まっている。これを受け、3代目のオーナー、呉佩玲さんをはじめ地元の人々が、花東縦谷((台湾東部の花蓮県と台東県を縦断する細長い谷間に広がる平原)地域の文化を伝える施設として保存しようと、取り壊しの撤回を求めて奔走している。
国立台湾科技大学建築学科の邱韻祥教授は、嘉賓旅社が取り壊しの危機に瀕していることを知り、5月30日に大学院生2人と現地を訪れ視察した。邱教授によれば、この建物は台湾で現在多く残されている日本建築の官舎とは異なり、台湾の人の手で設計・建築され、いたるところに加えられた工夫には歴史的な意義が込められているという。
邱教授は、大量の木材で建てられたこの家屋は74歳になるものの状態は良好で、所有者が文化部(日本の省レベル)に歴史建築としての認可を受けるための提出資料として、大学院生とともに測量、作図を支援し、取り壊しを避けられるよう取り組みたいとしている。
鎮公所は嘉賓旅社が面する博愛路の幅員を拡張する都市計画を実行するにあたり、先ごろ公聴会を開いた。会では地元の人々がこの道路の車の通行量はさほどでなく、拡張の必要はないと反対した。
嘉賓旅社の3代目のオーナー、呉さんによると、過去にも道路拡張のため一部取り壊しに協力しており、これ以上取り壊すと建物そのものがなくなってしまうという。保存して人々が内部を参観できるように開放するなど、将来的には公の用途に供したいとしている。