「フィリピンと中国大陸との間の南シナ海をめぐる紛争の仲裁手続き」により、中華民国(台湾)の擁する太平島(南沙諸島最大の島)の地位、並びに中華民国政府の同島における主権防衛の決意が影響を受けることが懸念されている。これに対し、行政院(内閣)は2日、中華民国政府が南シナ海の四つの諸島(南沙、西沙、中沙、東沙)における領土の主権と海洋の権利を断固守っていく決意と行為は疑うべくもなく、これからも同仲裁手続きの進展を注視しながら必要な対応策をとり、中華民国の主権を示していくと説明した。
行政院は、仲裁裁判所の同件に対する第一段階の決定内容を調べたところ、フィリピンの訴えた15項目では太平島について触れられておらず、「不告不理」の原則に基づき、仲裁裁判所は将来進める具体的な審理において太平島に対する判断はしないとの見方を示した。また、仲裁裁判所が今回行なった第一段階の決定は手続き上の問題について判断したのみで実質的な問題には触れていないため、一部で伝えられているような、「太平島が『島』から『岩礁』に降格された」という事実は無いと説明した。
行政院は、中華民国の擁する太平島は南沙諸島最大、かつ自然に形成された島嶼で、人類の居住と経済生活の維持が可能であり、UNCLOS(海洋法に関する国際連合条約)第121条における「島嶼」としての要件を満たすと指摘、当然、それによる排他的経済水域及び大陸棚を主張できると強調した。
この仲裁ではフィリピンが中国大陸側を訴える形で、中華民国は当初から当事者とされていない。このため、中華民国は被告としてこれに参加する義務を負わない。また、フィリピン側がこの仲裁手続きでこれまで、中華民国の参与を要請しておらず、仲裁裁判所も同手続きに対する中華民国の意見を求めていないことから、行政院は、同仲裁手続きは中華民国と何の関係も無く、中華民国政府は関連の決定を認めず、受け入れないとしている。
なお、太平島における埠頭の整備工事は今年12月に完了する予定。すでに完成した灯台と合わせ、馬英九総統が「南シナ海平和イニシアチブ」で示す、「主権は我が方にあるが、争いは棚上げし、平和互恵で、資源を共同開発する」という精神の実現を助けるものとなる。