2024/10/05

Taiwan Today

文化・社会

世界遺産登録を目指す台湾の自然・文化遺産(下)

2011/10/07
豊かな自然を残す烏山頭ダム。(台南市政府観光旅遊局サイトより)

行政院文化建設委員会(文建会)が「世界遺産の潜在ポイント」と定めた、世界遺産登録を目指す台湾の自然・文化遺産は18カ所。前回に引き続き、今回は西部を中心とする9カ所の概要と、世界遺産登録に有力と考えられる特色を紹介する。

(10)阿里山森林鉄道(嘉義県・市、南投県)

森林開発のため敷設された鉄道で、海抜100メートル以下の地点から2,000メートル以上へと通じる登山鉄道でもある。また、造林地を通る2,200~2,584メートルの支線は東アジアで最も高地の高山鉄道であり、全体では世界で唯一、森林・登山・高山鉄道という3つの機能を持つ。また、登山鉄道として山をほぼ4周旋回することも世界で唯一の特徴である。

(11)烏山頭ダムおよび嘉南大用水路(雲林県、嘉義県、台南市)

日本人技師・八田與一氏が尽力した1930年建設の水利施設。土堰(せき)堤築造工法としては当時の先進技術、セミハイドロリックフィル(反射水式)工法を採用、泥や砂が堆積しにくく、生態環境への影響もほとんどない世界の土木事業の中でも画期的なものとなった。さらに八田技師が「3年輪作制」を確立したことで、用水を利用できる農家が3倍となった。

(12)台鉄旧山線(苗栗県、台中市)

1908年に完成した旧山線の敷設は、当時の技術の下では大変困難なものであったが、その中で台湾の鉄道として最大斜度や、最急曲線、最長の鉄橋とトンネルを実現した。また東西の山々が生み出す急勾配でカーブの多い地形の中、自然や人々の集落が融合したさまは、文化的、歴史的に見ても他に代えられない高い価値を持つ。

(13)楽生療養院(新北市)

日本統治時代に建てられたハンセン病隔離病院で、当時の建築物の特徴を伝えている。かつては医療と隔離の双方の機能を持ち、公衆衛生やその歴史、建築、環境、人類学の面から研究対象となっている。過去の、患者が強制収容された閉鎖的な空間から、ハンセン病に対する認識の変化によって開放がすすみ、その歴史の不可逆性からも世界遺産に相応しい条件を備えている。

(14)桃園台地と貯水池(桃園県・市)

都市の発達に伴い、桃園台地各地に点在する貯水池は徐々に減っているものの、桃園特有の水利灌漑(かんがい)法を使った土地の利用法を代表する貯水池は依然3,000カ所以上、地元の人々の暮らしに密接に関わり、独特の風景を形成している。

(15)馬祖戦地文化(連江県)

中国大陸と対峙する最前線の一つ、馬祖島では、住民一人ひとりが斧を持ち、極めて硬い花崗岩の岩盤に、休むことなく坑道を掘り続けた。坑道の密度は世界一、また「軍民協力」など冷戦時を思わせるかつてのスローガンが、地下室や坑道、砲台などあらゆる軍事拠点にみられる一方、廟などの民間信仰にまつわる文化的な史跡も多い。戦争から平和や和解へと変化する、平和的共存という普遍的な価値を人類に教える啓蒙的な意味も持つ。

(16)金門戦地文化(金門県)

馬祖同様、中国大陸に対峙する前線として、大量の軍隊が駐留した過去から、戦争から平和や和解へと変化する、平和的共存の普遍的な価値を人類に教える啓蒙的な意味を持つ。また、4世紀ごろから始まった中国大陸からの移民はその後1,500年間続き、独特の建築物から宗教、冠婚葬祭などの儀礼まで豊富な文化遺産を残している。

(17)澎湖石滬群(澎湖県)

澎湖特有の漁法に使われる「石滬(シーフー)」は、強い季節風により海上に出るのが難しくなる冬季、潮の干満を利用して魚を獲るのに使われる。海から糧を得ていた先人の知恵の結晶といえる。現代的な漁業の漁獲量拡大に伴い、1970年代ごろから石滬の損傷や破壊が深刻となり、再現が難しいことからも世界遺産に相応しいといえる。

(18)澎湖玄武岩自然保護区(澎湖県)

地質的には台湾海峡の火山帯が最も活発に活動していた年代に形成され、極めて独特な美しい玄武岩の景観を完全な形でみることができる。地底から湧き上がった火山の溶岩が冷却され、玄武岩が柱状に連なった地形に、海の浸食作用を受けた自然の奇景がみられるほか、あまり人が訪れないために珍しい鳥類のパラダイスとなっている。また、絶滅の危機に瀕するアオウミガメの産卵地でもある。

以上18カ所の「世界遺産の潜在ポイント」は、10月7日から31日まで、自然・文化遺産の世界遺産登録申請作業を担当する文建会の文化資産総管理処準備室(文資処)が主体となって開催している「台湾世界遺産潜在ポイント特別展」(台中文化創意産業パーク)で紹介されている。同展では鉄道模型などの立体展示でも潜在ポイントを紹介するほか、海外の世界遺産も紹介している。

「台湾世界遺産潜在ポイント特別展」の概要やアクセス方法は、公式サイトhttp://www.2011pwhst.com.tw/で紹介。また18カ所の詳細は日本語でも紹介http://twh.hach.gov.tw/TaiwanJ.action。

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