2024/06/30

Taiwan Today

文化・社会

旧正月を締めくくる一大イベント「元宵節」

2012/02/03
台北ランタンカーニバルの「ランタンのトンネル」。(中央社)
旧暦1月15日(今年は2月6日)の元宵節は、台湾では昔から、春節(旧正月)、清明節、端午節、中秋節と並び、重要な節句の一つである。その昔台湾では、元宵節の夜、未婚の女性はネギを盗むとよい結婚の縁に恵まれるという言い伝えもあった。時代が進み、現代では元宵を祝うイベントが台湾全土の大規模な恒例行事となっている。1990年代に始められ、20数年の歴史を重ねた国を挙げての行事「台湾ランタンフェスティバル(旧台北ランタンフェスティバル)や、高雄ランタンフェスティバル芸術祭、台北ランタンカーニバルなど、各地がそれぞれの特色を打ち出したランタン祭りが行われ、華やかさを増している。

元宵節の起こり
古くからの慣わしでは、旧暦1月15日を「上元」、同7月15日を「中元」、同10月15日を「下元」として、それぞれ重要な神々の誕生日を祝うが、中でも天官大帝の誕生日「上元」は最も重んじられ、活気のある節句となっている。

旧暦1月15日は元宵節、または上元、元夕、灯節とも呼ばれ、華やかな祭りの日として、また旧正月の最後の1日として、これを区切りにまた日常に戻るため、人々は存分に祝って過ごす。このため、「小過年」、つまり「小正月(こしょうがつ)」とも言う。

元宵節のしきたり
1.上元祈福
古くから人々は自然を「天界」、「地界」、「水界」の3つに分け、それぞれに人格を持たせていた。このため、それぞれをつかさどる天官と地官、水官を合わせ、「三官大帝」と呼ぶ。天官はおもに福を与える役目を担っているため、人々は旧暦1月15日の天官大帝の誕生日に、福を与えてもらえるように、早朝から供え物を用意して祈る。

2.元宵節の食べ物
元宵(元宵団子)を食べる風習は宋の時代に始まったと考えられる。当初は「浮円子(浮き団子)」と呼び、明の時代に「元宵」と呼ばれるようになり、家庭ごとに元宵を作って食べるようになった。これは年初の縁起のよいこととされ、団子を食べることで家族の福を表していた。元宵はまず、祖先に供えまつってから、家族そろって食べる。これも一家団らんの幸せを象徴している。団子にはあずきやゴマ、ピーナツをあんにした甘いものや、甘くないものもある。また、団子の作り方には、丸めたあんをもち米粉をのせた大きなざるの上で転がし、徐々に大きくする作り方と、団子の皮であんを包む中国大陸南方の作り方を継承したものがある。

 

丸めたあんをもち米粉をのせた大きなざるの上で転がし、「元宵(元宵団子)」を作る。(中央社)

また、台中市東勢の客家の人々は元宵節には「新丁粄(粿)」を作る。「新丁粄」とは男子が重要な働き手だった農村社会の時代に、その前の年に新たに生まれた男子「新丁」の健康と長寿を願って供え、ふるまう「粄(もち)」。苗栗の客家人は団子ではなく、「菜包(大根の千切りやしいたけ入りのまんじゅう)」を食べ、この形が豚を運ぶ竹製の籠に似ていることから、「豬籠粄」とも呼ばれる。

3.灯籠(とうろう)
元宵節は「灯節」とも言われ、さまざまな飾り灯籠(とうろう)「花灯」を飾る慣わしがある。

灯籠になぞなぞを書く習慣は、かつて寺や廟で行われていた。これは寺や廟が人々が時間のあるときに集まる場所だったためで、飾られた灯籠にはなぞなぞを書く面があった。飾り灯籠のコンテストや展示が行われる場所でもあった廟などでは、賞品が用意され、小正月の縁起のよさも手伝って、大いに盛り上がった。現代では雑誌やテレビ番組など、なぞなぞを行う場所も多様化し、さまざまな人々のニーズに応え、伝統行事が現代社会に溶け込んでいることの表れとみることがでいる。

元宵節の灯籠には龍の灯籠がよく登場する。これは龍が民族のシンボルであり、縁起のいい伝説の動物ということが背景にある。また、元宵節当日には各地の獅子舞も出動し、厄を払って平安を祈るとともに、新年と節句のお祝いも兼ねている。

台湾各地の元宵節イベント
台湾では、花灯を飾るイベントや、台湾ランタンフェスティバルを始めとする、台北や台中、高雄など各地のランタンフェスティバルのほか、新北市の平渓区の空に灯籠を放つ「天灯」も有名だ。また、中部の苗栗県では「苗栗火旁龍」として、爆竹とロケット花火を舞う龍に放ちながら、「厄払い(古いものを取り除く)して新年を迎える」との意味を込めている。台南市塩水区にも有名なロケット花火の祭り「塩水蜂炮」がある。台東県は財神(福の神)に爆竹を放って福を願う「台東元宵炸寒単爺」というイベントもある。

東西南北で代表的な、平渓の天灯、台南塩水のロケット花火、台東の炸寒単、澎湖の乞亀の儀式は、「北天灯、南蜂炮、東寒単、西乞亀」とも呼ばれる。また、台湾の客家人の12大祭りに挙げられる「苗栗火旁龍」や、野柳の「神明浄港」など、それぞれがユニークで特徴豊かな文化的資産と言えるだろう。

平渓の天灯は「孔明灯」とも言われ、諸葛亮(諸葛孔明)が通信のために発明したとも伝えられている。あるいは、外形が絵画に残された諸葛亮の帽子と似ているからとも言われている。天灯は熱気球と同じ原理で灯籠を空に上げる。

寒単爺とは、台東市の玄武堂にまつられている武道と商売の神で、元宵節には寒単爺に扮した人が赤い半ズボンだけを身に付け、身体を張って炸裂する爆竹を止めるというもので、たくさんの痕が身体に付く。約40分間に20万台湾元(約52万日本円)相当もの爆竹が弾け、商売人はこれが盛んなほど繁盛するといわれる。

塩水のロケット花火は、清の光緒帝の時代、20数年にわたり疫病に苦しめられた塩水で、関帝君(関羽)の誕生日や元宵節を祝うため、関羽を筆頭に街を練り歩いたことから来ている。道すがらに人々は爆竹や花火を盛大に上げ、厄や疫病をはらったという。

乞亀とは、もち米や小麦粉を亀の形にしたものを廟の前に供える慣わしだ。元宵節の当日に、占いにより選ばれた信者がこれをもらって食べ、家族の平安を祈った。これを食べた人は必ず次の年にそれより大きな亀を供えることになっているため、年々大きくなり、数百キログラムに達するものもある。

ランキング

新着