2024/05/05

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「八仙水上楽園」粉塵爆発から2年、台湾医療チームの取り組みの成果

2017/06/27
2015年6月27日に台湾北部・新北市のテーマパーク「八仙水上楽園」で発生した粉塵爆発事故から丸2年を迎える。新北市の侯友宜副市長(左から2人目)は、予後診察を受けるために台湾へやってきたシンガポールのMegan Loyさん(右から2人目)を見舞った。Megan Loyさんさんは現在、シンガポール国立大学医学部で学ぶ。(新北市提供、中央社)
隔年開催されるアジア・パシフィック熱傷学会(Asia Pacific Burn Congress)が今年4月、台湾北部・台北市の台北国際会議センターで開催された。アジア太平洋の29カ国・地域から200名余りの学者、それに熱傷医療分野のスタッフを含めると合計360名余りが、それぞれの経験を共有すると共に、研究論文150本余りを発表した。11回目となるこの学会は、台湾熱傷暨傷口照護学会が主催するもので、テーマは「Towards Holistic Care for Burn Recovery(熱傷からの回復のための包括的ケアに向けて)」だった。
 
今回の学会では、いまからちょうど2年前となる2015年6月27日に台湾北部・新北市のテーマパーク「八仙水上楽園」で発生した粉塵爆発について、専門家による研究報告と議論が行われた。この粉塵爆発は死者15名、重軽傷者484名を出す事故となり、熱傷患者1人当たりの熱傷面積は平均40%に達した。このレベルの熱傷の場合、一般的な死亡率は25%と言われているが、台湾の医療チームは最終的にこれを3%に抑えることに成功。その成果は海外から高く関心が寄せられ、また評価されている。
 
このシンポジウムでは新北市衛生局の林奇宏局長が、当時事故現場で患者に応急処置を行って病院へ搬送し、患者の急性期における医療処置及びニーズに応じたコーディネートを行い、「焼燙傷復健暨急性後期照護中心(熱傷患者のリハビリ及び亜急性期ケアセンター)」を設置し、患者のその後の心身のケア、進学や就職など個別の管理サービスを行い、患者の社会復帰を手伝ってきたことを紹介した。
 
新北市衛生局によると、米の衛生当局から派遣されて台湾を訪問したNarayan Iyer博士とDanielle Turley博士はいずれも、この粉塵爆発について短期間に適切な処置を行い、患者の死亡率を最低限に抑え、その後も長期にわたり患者のケアを行い、社会復帰を手助けしていることについて、台湾の危機管理と医療能力の高さに感服していたという。
 
三軍総医院整形外科主任でもある台湾熱傷暨傷口照護学会理事長の戴念梓医師はこの学会で、「台湾の熱傷治療・ケアチームの能力に強い自信を持っている。これからも精進し、台湾の人々に質の高い医療サービスを提供していきたい」と抱負を語った。
 
この粉塵爆発から丸2年を控えた26日、新北市立聯合医院板橋院区では「焼燙傷復健暨急性後期照護中心(熱傷患者のリハビリ及び亜急性期ケアセンター)」の設置1周年を記念するイベントを行った。同センターはこの1年間で、整形外科及びリハビリのための外来治療のため延べ1,189名の患者を受け入れてきた。その後、リハビリ治療を受けた患者は延べ4,652人に達する。これにより、患者の瘢痕組織の過剰な増殖(ケロイド)や関節の瘢痕拘縮を大幅に改善することに寄与した。
 
この粉塵爆発には外国人も巻き込まれた。「八仙水上楽園」の粉塵爆発事件後、台湾を離れた外国人患者は合計7名。内訳は香港籍3名、日本籍2名、米国籍1名、シンガポール籍1名となっている。そのうち2名は台湾での予後診察を受けることを拒否しており、1名は現在検討中だという。残りはすべて新北市立聯合医院で予後診察を受けている。
 
そのうちの1人、シンガポールの女性がこのほど台湾にやってきた。この夏に大学の医学部2年生になる彼女は、高校の卒業旅行でクラスメートと台湾にやってきて事故に巻き込まれた。熱傷面積が80%に達していたことから、医療専用機によりシンガポールに搬送されて治療を受けた。シンガポールの病院で治療を受ける過程で、医師の熱意に動かされ、昨年、難関のシンガポール国立大学医学部を受験した。将来は医者になって、人々を助けたいという目標を持っている。
 
新北市衛生局によると、今後もリハビリが必要な患者は、事故当初の440名から大きく減り、現在は102名となっている。患者の多くが、リハビリで大きな進展が見られる。また、患者の8割近くがすでに日常生活を取り戻すまでに達しているという。また、患者の中には男性1名、女性1名の合計2名がこれから渡米し、テキサス州ガルベストンにある熱傷治療専門の病院、シュリナーズ・ホスピタルズ・フォー・チルドレン(Shriners Hospital for Children- Galveston)で形成外科の治療を受けるとしている。
 

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