2024/05/15

Taiwan Today

政治

中国の「一国二制度」による統一攻勢、蔡総統が指針を表明

2019/03/12
蔡英文総統(中央)は11日、国家安全会議を開いた。蔡総統はこの会議で、「一国二制度」による統一攻勢に対応するための指針を表明した。写真左は陳建仁副総統、右は蘇貞昌行政院長(=首相)。(総統府サイトより)
蔡英文総統は11日、国家安全会議を開いた。蔡総統は、中国が進める「一国二制度」による統一攻勢が台湾の国家安全に与える脅威に対抗し、中華民国(台湾)の主権と自由・民主を守るため、台湾海峡両岸関係、外交情勢、経済、民主・法制などに関して各省庁の報告を聴取した。蔡総統は最後に、「一国二制度」による統一攻勢に対応するための指針を表明し、これを国防や行政部門の行動規範とすることを明らかにした。蔡総統の談話の概要は以下の通り。
 
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中国の国家主席である習近平氏は今年1月2日、いわゆる「台湾同胞に告げる書」発表40周年式典で、「一国二制度」による台湾統一の具体案を模索する考えを示した。最近開催された第13期全国人民代表大会第2回会議でも、習近平氏の談話内容が今後の対台湾工作の核心となることが再確認された。
 
こうした動きはいずれも、北京当局がすでに台湾統一に向けた工作を政治的なスケジュールに加えていることを意味している。つまり、台湾海峡両岸関係は極めて厳しく、複雑な段階に突入しているのである。
 
中華民国政府の現在の台湾海峡両岸政策に関する主張は現状維持である。つまり、主権独立という中華民国の現状を守り抜くことだ。「一国二制度」はこの現状を一方的に破壊するだけでなく、中華民国の主権の消滅を意図し、台湾に対して中国による統一を強要するものである。これまでの世論調査の結果から見ても、圧倒的多数の台湾人はこれを受け入れることが出来ないと考えている。1月2日、私は台湾の民意を代表して、習近平氏が示した「一国二制度」による台湾統一の具体案模索に、明確な回答を行った。
 
台湾ではどの政権が与党となっても、台湾海峡両岸が調和のとれた交流を行い、正常で健康的な関係を持つことを希望している。私は総統就任後、中国を挑発しない、中国に対抗しない、台湾海峡両岸の緊張を生み出さない、そして軍事的衝突を引き起こさないことを意識してきた。しかし、北京当局は我々の開放的で自由な民主体制を利用し、台湾の政治、経済、社会発展に介入してきた。これはすでに台湾にとって目下最大のリスクとなっている。
 
このため私は新年の談話で、台湾海峡両岸の交流のため、「民生の安定を図るためのセーフティーネット」、「情報セキュリティのセーフティーネット」、「民主主義のセーフティーネット」の3つセーフティーネットを確立すると述べた。
 
私はここで再度強調したい。私が率いる政府は、台湾海峡両岸の平和と安定を維持するために力を尽くし、両岸の正常な交流に賛成する。しかし、我々は「一国二制度」に断固として反対するし、台湾統一を目的とするいかなる過渡的な動きも拒否する。これは決して戦争と平和という二者択一ではなく、中華民国の主権独立の現状を維持するか、あるいは中国によって統一されるか、という選択である。
 
「一国二制度」という脅威に対し、台湾の政治家や指導者は責任を負わなければならない。それはつまり、中華民国の主権を守るという責任であり、民主・自由の生活スタイルを維持し、守るという責任であり、台湾海峡とその周辺地域の平和を維持するという責任であり、私たちの子孫のために選択権を確保し続けるという責任である。
 
今年は「五四運動」100周年、天安門事件30周年に当たる。「民主主義」こそが、台湾海峡両岸にとって今年のキーワードとなるだろう。
 
私はここで再び、北京当局に求めたい。台湾海峡両岸の平和的発展の鍵を握るのは、中国が民主化への道を歩むことができるかどうかにかかっている。台湾海峡両岸の両方に民主体制が確立されて初めて、双方による意思疎通、平和的共存、対立解消が実現し、そして道が開けるだろう。
 
習近平氏が10日の全国人民代表大会で行った発言は、「恵台利民(=台湾に恩恵を与え、民を利する)」に名を借りた懐柔政策であり、「一国二制度」による台湾統一を実現するための布石である。北京当局が、中国進出する台湾企業や台湾人留学生を優遇することに我々は反対しない。しかし、いわゆる「恵台利民」は自発的で真心を持った友好的態度であるべきで、「一国二制度」を推進するための道具であってはならないと我々は考えている。本当に「台湾に恩恵を与える」ということは、中華民国が存在するという事実を正視し、同時に中国を民主・法治へ向かって歩き出させることである。
 
我々は交流には反対しない。我々が反対するのは「一国二制度」である。我々は平和の追求に尽力する。国防力を高めるための一切の努力は、衝突を回避するためのものである。台湾海峡両岸が新たな局面を迎えるに当たり、政府は国家の主権を守る責任を持つ。そして、自由、民主、開放によって台湾海峡両岸の良い競争を生み出さなければならない。我々は、台湾が信じる普遍的価値観に対して自信を持っている。台湾の経済、社会、民主制度に対しても、自信を持っている。
 
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「一国二制度」による統一攻勢に対抗するためのガイドライン
 
中国の「一国二制度」による台湾統一が、国家の安全に与える深刻な影響に対応し、国家の主権及び我々の子孫のために台湾の前途に関する選択権を確保するため、総統は特別にこのガイドラインを定める。これを、国防及び行政部門の行動規範とし、国家の安全保障を強化する。また、国家の経済や社会の正常な運用に衝撃を与えることを回避する。
 
【台湾海峡両岸】
台湾海峡両岸の交流にしっかり向き合い、対等と尊厳を原則とし、民主主義を交流の基礎とする。ほかの民主国家のやり方を参考に、台湾海峡両岸の交流に関する規定を全面的に見直す。中国共産党による交流を隠れ蓑にした対台湾統一工作の浸透や台湾の内政干渉に、積極的に対応する。
 
【民主・法制】
直ちに「台湾地区與大陸地区人民関係条例(いわゆる両岸人民関係条例)」の修正案作成に取り掛かり、民主主義のセーフティーネットに関する法制度を整える。これにより、民主的な監督制度と防衛の枠組みを強化する。
 
【経済】
米中貿易戦争と国際貿易の局面の変化に対応するため、中国進出している台湾企業による台湾回帰に積極的に協力する。また、産業の高度化の促進に尽力し、海外進出を強化し、台湾の全体的な経済発展を安定させる。世界の産業チェーンにおける台湾の優位性と戦略的地位を高め、主要な貿易パートナーとの二国間や多国間貿易協定を積極的に締結する。
 
【外交】
台湾に友好的な新たな国際情勢を活用し、国際社会と手を取り合って、中華民国の主権を消滅させようとする中国共産党に対抗する。
 
【安全】
中国大陸の政治・経済・社会の情勢変化を常に把握し、中国共産党による台湾の世論操作、社会浸透、国防や核心産業などの機密窃盗を防ぎ、国家の安全と社会の安定を守る。
 
【国防】
国防予算を安定的に増加させ、国軍の全力を全面的に引き上げる。これにより、中国の軍事的暴走を抑止し、中華民国の主権と自由・民主を確保する。
 
【社会】
社会との意思疎通を全面的に強化し、台湾住民の対中国政策に関するコンセンサスを形成する。国内が団結し、国家の主権を守るために一致した行動をとる。

 

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