2024/05/01

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人類の窒素排出が遠洋生物に影響、国立台湾大学の研究で確認

2017/05/22
国立台湾大学(台湾北部・台北市)の研究グループが東沙諸島で行った研究により、人類が生み出す窒素が遠洋の環境に影響することが初めて確認された。写真は同大学地質科学部の任昊佳助理教授。(中央社)
国立台湾大学(台湾北部・台北市)の研究グループが東沙諸島で行った研究により、人類が生み出す窒素が遠洋の環境に影響することが初めて確認された。この研究成果は科学専門誌の「Science」に掲載されている。遠洋の植物プランクトンに影響することで、生態系のバランスがとれた現在の状況を変化させる恐れがある。
 
植物プランクトンは他の生物と同じで、窒素が無ければ成長できない。空気の大部分は窒素だが、ほとんどの植物プランクトンはこれを使えない。こうした窒素は一部の生物による窒素固定作用により、植物プランクトンが使うことの出来る窒素に転換されなければならない。しかし、海での窒素は少なく、植物プランクトンの成長は抑制されている。
 
科技部(日本の省レベルに相当)と国立台湾大学が資金面でサポートする中、同大学地質科学部の任昊佳助理教授(Assistant Professor、講師の上にある職階)率いる研究グループは2013年から2015年までの間、南シナ海北部の東沙環礁内で珊瑚のサンプルを採集し、珊瑚に含まれる有機態窒素の同位体の組成を測量、人類が排出した窒素信号を記録した。2016年に研究成果がまとまり、専門誌に投稿した。
 
東沙環礁は最も近い陸地から300km離れており、人の排出する窒素がこの地に到達するには大気による輸送以外に無い。また、その半密閉型の環礁という地理環境は、科学者たちがそれを「天然の実験室」とし、遠洋環境の変化を追跡することを可能にする。
 
今回の研究成果は人類の活動によって排出される窒素が海洋環境に影響を及ぼしていることを初めて直接証明することに成功。また、珊瑚に含まれる、比較的軽い窒素14の同位体信号が急激に強まっており、その時期と動向がアジアにおける化石燃料の燃焼増加と一致することが分かった。2010年、人為的に排出された窒素による窒素堆積は同地区の表層海水における窒素の年間投入量の20%を占めているという。
 
現在、人によって排出された窒素の生態系に対する実際の影響は確認されていないが、任助理教授は、20%という窒素投入量は海においては少数で、加えて海水によって希釈されるため観測はいっそう難しくなると指摘している。しかし、長期にわたる累積が影響を生む可能性もある。例えば、「そこでの生態系バランスの破壊」である。細菌や藍藻類など窒素固定生物の多くは熱帯や亜熱帯の遠洋など、養分の少ない地域に生息しているが、人為的な窒素の排出が増える中、その生存環境が悪化し、窒素固定生物の成長を抑制する可能性もあるという。これらの影響についてさらに研究が必要だとのこと。

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