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欧州での漢学が発展、タン・プライズ漢学賞が研究者にモチベーション

2017/06/22
「東洋のノーベル賞」と称されるタン・プライズの漢学賞が欧州の研究者にとって大きなモチベーションとなり、漢学研究が東欧、西欧などで広く発展している。写真は昨年、第2回タン・プライズ漢学賞を受賞した、米コロンビア大学名誉教授のウィリアム・セオドア・ド・バリー氏(中央右)。中央左はタン・プライズ基金会の陳振川執行長。(中央社)
チェコのプラハ・カレル大学における「蒋経国国際漢学センター(Chiang Ching-kuo International Sinological Centre at Charles University, CCK-ISC)」は今年で設立20周年。「東洋のノーベル賞」と称されるタン・プライズ(唐奨、Tang Prize)教育基金会の曽志朗董事(理事)は先ごろチェコで講演、タン・プライズ設立のいきさつ、運営状況、未来に向けたビジョンを説明して同賞の普及に努める共に、欧州各国における漢学の発展状況についても話し合った。
 
財団法人蒋経国国際学術交流基金会は長期にわたり、海外における漢学研究の普及に努めており、20年前にはチェコ・プラハでの漢学センター設立に協力、さらには奨学金を提供して優れた研究者を激励した。このモデルが成功すると、東洋の学問に興味を持つ学者が大勢集まるようになった。漢学センターではシンポジウムを開催している他、東欧と西欧などの国々の学者たちを互いに結びつけることにもなった。
 
曽董事によれば、中華民国(台湾)の国家図書館にも「漢学研究センター」があり、漢学を研究する海外の学者に奨学金を与えている。海外から台湾を訪れて研究を行う学者も少なくない。さらに多くの大学とも交流を重ねており、数多くの優れた漢学研究の成果が台湾で生まれている。中国大陸では、漢学研究がしっかり行われなかった時代があり、今では積極的に台湾を手本にしているという。
 
「東洋の学問のうち漢学は重要な地位を占める」とする曽董事は、数千年前から東西交流の痕跡は見られるとし、例として秦の始皇帝の兵馬俑に西洋人に似た俑(古代中国で死者といっしょに埋葬された人形)が多くあることを指摘した。曽董事は、こうした現象は突然現れたのではなく、長期にわたる交流があってこそのものだと主張、このため漢学は単一民族によって発展させられたものではなく、源を異にする文化が共に参与し、それらが集まって最終的に漢学の精髄になった可能性があると述べた。
 
曽董事は、漢学研究は過去を研究するのみならず、未来の発展にもかかわっていると主張。人類文明の社会の変化から過去の歴史を目にし、さらにそこから経験をくみ取って未来を展望することができる。西洋の学者たちの多くも、東洋の全体を考慮する概念と西洋の個を重視する概念を融合させることで、大同思想(孔子の著した『礼記』の「礼運」編に見られる)による理想的な世界の実現を希望しているという。
 
曽董事は、「タン・プライズが漢学賞を設けていることは学者たちにとって大きなモチベーションになっている」と話す。曽董事によると、欧州の多くの学者はタン・プライズに漢学賞が設けられたことに大変興奮し、この分野を目指すようになっているという。過去には物理や化学などの研究分野が重視される傾向が強く、人類文明や社会を研究する学者たちが高額の賞金を得ることは難しかった。しかし、タン・プライズの漢学賞ができたことで、漢学研究の重要性と地位は高まった。
 
タン・プライズの得がたい点は、研究者に高額の賞金を授与し、研究経費も提供することにあり、まさに研究者たちにとって最大のサポーターとなっている。学者たちはこれによって、研究活動に全力で打ち込める他、若手も育成でき、学問の伝承と持続可能性を実現することを可能にしているのである。
 
 

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