2024/05/05

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屏東県に「屏東紅藜故事館」、先住民族の作物を後世に伝える

2017/08/22
台湾最南端・屏東県は21日、先住民族が手掛けたアートの数々を展示する「礼納里1n1原創空間」に「屏東紅藜故事館」をオープンさせた。写真左から3人目は原生種のレッドキヌアの栽培を守ってきた巴鳳英さん。左から4人目は屏東県の潘孟安県長。(中央社)
台湾最南端・屏東県は21日、先住民族が手掛けたアートの数々を展示する「礼納里1n1原創空間」に「屏東紅藜故事館」をオープンさせた。「紅藜」とは、近年スーパーフードとして注目されているレッドキヌア(和名はタカサゴムラサキアカザ)のこと。先住民族の集落で作付けされているレッドキヌア産業をアピールし、レッドキヌアをその生態や伝統、イノベーションなど各方面から紹介するほか、レッドキヌアを使った石鹸やパック、酵素、美容液、パン、クッキーなど関連商品も販売する。開館時間は毎週火曜から日曜、午前9時から午後5時まで。屏東県では、既存の「礼納里旅客センター」、「四大工坊」、「原住民美食館」などと共に、同館が県道185号線沿いの新たな観光名所になることを期待している。
 
屏東科技大学の蔡碧仁教授が率いる「屏東紅藜研究チーム」は約10年前、行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)及び林務局(日本の林野庁に相当)の委託を受け、屏東県の先住民族集落において、今後発展の可能性が高い農作物に関する研究を行った。そのとき蔡教授は、そこで生産されるレッドキヌアが高い栄養価を持つことを発見した。研究チームは、屏東県の先住民族集落で作付けされているレッドキヌアを「台湾藜(タイワンキヌア)」と名付けた。
 
地元に住む先住民族たちは、レッドキヌアを食べると非常にリラックスした気分になると言う。蔡教授の分析によると、これはレッドキヌアに含まれるGABA(ギャバ)という成分に、脳の興奮を鎮め、精神を安定させる作用があるため。屏東県に住む先住民族の一つ、パインワン族は、レッドキヌアのことを「Djulis」と呼ぶ。穂が出てくると、赤、オレンジ、黄色、桃色など鮮やかに色づくことから、「穀物界のルビー」とも呼ばれている。
 
屏東県は3年前から、県内の先住民族集落でのレッドキヌアの栽培を奨励している。現在、レッドキヌアを栽培する集落は8つに増え、昨年10月には農業従事者180名が加入し、「屏東県原住民特色農業推動協会」を設立した。今年4月には、食品大手の義美食品公司が同協会と10年契約を結び、高価格で屏東産レッドキヌアを買い取ることを約束した。屏東県では今年末までに、レッドキヌアの作付面積を100ヘクタールに拡大することを目指している。
 
21日に行われた「屏東紅藜故事館」のオープニングセレモニーには先住民族の巴鳳英さんが招待を受けて出席した。巴鳳英さんの身分証に記載されている年齢は96歳だが、結婚後に戸籍を作成したため、実際の年齢は104歳と推定されている。巴鳳英さんは、台湾原生のレッドキヌアが絶滅の危機に瀕していたときも、レッドキヌアの栽培にこだわり続けた人物。屏東科技大学の蔡教授は、巴鳳英さんが守り続けた原生種からレッドキヌアの栄養価を実証し、これが屏東県のレッドキヌアを一躍有名にすることにつながった。
 
巴鳳英さんの孫娘、張誌紜さんによると、レッドキヌアは酒の醸造に欠かせないもので、巴鳳英さんはその両親から受け継いだ言い伝えを守り、レッドキヌアの栽培にこだわり続けてきた。巴鳳英さんは、孫の張誌紜さんにも常々、レッドキヌアは先住民族にとって伝統の作物であり、必ずや継承していかなくてはいけないものだと言い含めてきたという。
 
張誌紜さんはこれまで、そんな祖母の話を疑っていた。しかし、蔡教授によってレッドキヌアの高い栄養価が証明されたことから、今年に入って公立病院の理学療法士としてのキャリアを捨てて故郷に戻り、レッドキヌアの栽培に専念することにした。屏東県や台東県(台湾東部)に住む親戚20人も仲間に加わり、現在では合計10ヘクタールの農地でレッドキヌアを栽培する。「屏東県原住民特色農業推動協会」に加入し、義美食品公司の契約農家にもなった。
 
屏東県の潘孟安県長(=県知事)は21日に行われたセレモニーで、「レッドキヌアはこれまで産業化されてこなかったが、近年は県や農業委員会、工業技術研究院(ITRI)、原住民族委員会などが協力し、レッドキヌアを台湾産コーヒーに続く、台湾の主要産業の一つに育て上げた。現在は規模の小さい農家が中心だが、集団化によって台湾産レッドキヌアの海外マーケティングにも力を入れていきたい」と抱負を語った。
 
行政院農業委員会農糧署の陳建斌署長は、屏東県北部にある瑪家郷などでは、農薬や化学肥料を使用しない「友善耕作」と呼ばれる方法でレッドキヌアを栽培している。このため、条件に合致すれば農糧署が実施する「大糧倉計画」の助成金を申請することができる。農糧署はまた、屏東県のレッドキヌア産業の国際化に協力していきたい考え。
 

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