2024/04/29

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設立30周年迎える国家両庁院、電子音楽の無料コンサート

2017/09/18
国家両庁院は創立30周年を記念し、10月28日午後5時から10時まで、国家両庁院屋外広場にて『衆声之所(Electric Indigo)』と称する電子音楽の無料コンサートを開催する。写真は芸術総監を担当する音楽プロデューサーの林強さん。(Par表現芸術雑誌提供、中央社)
デジタル系やテクノ系などの総称、電子音楽のステージと言えば、台湾では非主流であり、むしろ「うるさい」、「わかりにくい」と煙たがれることが多い。また、クラブやアルコールなどマイナスのイメージと結びつけられることも多い。そんな電子音楽が、台湾北部・台北市中正区にある総合芸術文化施設、国家両庁院に登場する。
 
国家両庁院は、中正紀念堂の敷地内にある総合芸術文化施設で、国家戯劇院(ナショナルシアターホール)と国家音楽庁(ナショナルコンサートホール)の総称。創立30周年を記念し、10月28日午後5時から10時まで、国家両庁院屋外広場にて『衆声之所(Electric Indigo)』と称する無料コンサートを開催する。歌手兼音楽プロデューサーの林強さんの呼び掛けに応じ、多くのアーティストが集結する。自由自在、明るい、軽快な光と影のイリュージョンと電子音楽によるパフォーマンスが、国家両庁院のこれまでの近寄りがたいイメージを大きく変える。
 
林強さんは取材に対し、「自分が得意とする電子音楽は、音楽の世界ではあまり人気がなく、流行にも乗っていないことはよくわかっている」とし、「創立30周年を迎える国家両庁院が自分に打診をしてきたとき、ほかにも人選があるのだろうと考え、また丁度、映画音楽の制作で忙しかったこともあり、2回も断ってしまった」とのエピソードを披露した。
 
しかし、台湾で大型の祝賀イベントなどに参加するアーティストは、すぐに「親中国派」だとか、「わざと台湾らしさを出そうとしている」などのレッテルを貼られることになる。「そんな状況を変えたい」と考えていた林強さんは、国家両庁院からのオファーを引き受けることを決めた。
 
林強さんは、今回のイベントに「この土地から生まれたもの、例えば先住民族の要素などを取り入れることはできないかと考えた」という。そして、先住民族のシンボルマークや、森林や天地を敬う精神などの要素を、パフォーマンスの土台として取り入れることを決めた。
 
林強さんは長年、電子音楽による創作に取り組み、電子音楽の要素で、映画音楽を斬新で叙事的なものに変えることに成功した。台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシエン)監督や中国大陸の賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督などの映画作品で、林強さんが手掛けた映画音楽は多くの人々を魅了してきた。ここ2年ほどは、パフォーマンス・アートの分野にも挑戦しており、2016年に台湾のダンスカンパニー「クラウド・ゲート2」(雲門舞集2)の芸術総監、鄭宗龍氏とコラボした『十三声』は大変好評で、興行収入も上々だった。
 
とはいえ、電子音楽と言えばマイナスのイメージも依然強い。「そんなイメージを変えたい」と考えていた林強さんは、10数年前から仲間と共に、喫茶店、画廊、アルコールを取り扱っていない場所などでパフォーマンスを行い、紹介を重ねることで、電子音楽とは日常生活と非常に近く、自由自在で、そして明るいものだということを一人でも多くの人に理解してもらおうと努力してきたという。
 
林強さんは、現在の商業環境では、芸術家あるいは歌手を一緒くたにする傾向があるが、これがかえって交流の機会を、そして人々が電子音楽への理解を深める機会を失わせていると指摘。10月28日に開催する無料コンサート『衆声之所』は、私たちの生活、自由自在、そして明るいといった要素をベースにしたもので、聞きにくる人たちが自由自在に動き回ることができるという。座って聞いても良し、立って聞いても良し、さらには会話を交えながら交流することもできるという。
 
「創作者にはそれほど大きな技量があるわけではなく、一度聞いただけで皆が電子音楽を好きになることはないと思う」としながらも、「老若男女が足を運び、少なくとも音楽に耳を傾け、その場を離れずにいてくれたら、それだけで十分にありがたいことだ」と林強さんは笑う。
 

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