英国政府が実施する「台英創新産業研究人員移地研究計画（UK-Taiwan Innovative Industries Programme）」が21日にスタートした。英国政府が初めて、台湾のイノベーション産業の研究人材がイギリスで研究を行うことを支援する。英国在台湾弁事処（台湾における英国大使館に相当）は21日、英外務省のロビン・グライムス（Robin Grimes）首席科学顧問と共に、同計画のスタートを宣言した。グライムス首席科学顧問とは旧知の仲だという陳建仁副総統も、招きを受けて駆け付けた。
「台英創新産業研究人員移地研究計画」は、台湾の高等教育機関、工業技術研究院、中央研究院に所属する研究者を対象としたもの。研究計画が採用されれば、イギリスでの研究費用の50％が助成される。助成期間は最長12カ月間となっている。
グライムス首席科学顧問は挨拶で、「英国政府は初年度、このプログラムに20万ポンドを投入する。大部分の経費は、台湾の研究者が英国に渡り、高等教育機関や関連の研究機関で研究を進めるための支援に充てる。将来は英国の研究者が台湾へ渡って研究を行うことも範囲に加えるかどうか検討したい」と語った。
英国在台湾弁事処のCatherine Nettleton代表（大使に相当）は、「台湾の研究者はこれまで米国や日本へ赴いて研究を行うケースが多かった。英国はこのプログラムを通じて、台湾の研究者が英国のトップクラスの科学者やイノベーション人材と接触できるよう協力したい」と述べた。
財団法人工業技術研究院（ITRI）の劉軍廷副院長は、「このプログラムは、エキサイティングなマイルストーンとなるものだ」と指摘。台湾の最高学術研究機関である中央研究院の廖俊智院長は「台湾と英国の結びつきを強化できるよう期待している。特に科学分野において双方が各自の得意とする能力を発揮し、互いにメリットがあり、ウィン・ウィンに結びつく領域において、その協力関係をさらに拡大できるよう期待している」と述べた。
陳副総統は、台湾は「5+2産業」（アジアのシリコンバレー計画、グリーン・エネルギー産業、スマート機械産業、バイオ医療産業、国防産業、それに新農業と循環型経済）イノベーション計画や「前瞻基礎建設（将来を見据えたインフラ建設）」を実施しているが、これらは産業の構造転換と台湾の競争力向上につながるものだと指摘。また、台湾と英国は広い分野で協力関係を築き上げているとして、英アーム（ARM）社が台湾北部・新竹に研究・開発センターを、オックスフォード・インストゥルメンツ社も工業技術研究院や国立台湾大学に研究・開発センターを設置するなど、早くから対台湾投資のメリットを見出している英国企業も多いと述べた。
陳副総統はさらに、洋上風力発電、原子力発電、スマートシティ、鉄道産業など各分野で、台湾と英国が定期的に話し合いをしていること、2017年末に英ロンドンで次官級の第20回「台英貿易経済対話」が開催された際には、台湾側が2018年の「貿易経済対話」に、農業、再生可能エネルギー、金融サービスも議題に追加することを発表するなど、英国との協力分野の拡大に意欲を示していることを説明した。また、数日後には英国5都市の代表が台湾へやって来て、第2回「台英スマートシティ・フォーラム」に出席することになっており、台湾と英国の協力が各分野で進んでいることを強調した。
陳副総統はまた、今後台湾と英国が協力できる分野にも言及。台湾は人口知能（AI）、クリーンエネルギー、スマート製造などの分野で今後の発展が期待でき、自動車の自動運転技術も双方が協力できるもう一つの分野だろうと述べた。
英国はコネクテッドカー＆自動運転車(CAV)の法規や試験などの分野で世界をリードしている。一方で台湾では、EV（電気自動車）の研究・開発が進んでいる。例えば電動スクーターのGogoro、電気バスの華徳動能（RAC EV）、工業技術研究院は現在、先端的なEV技術の研究を進めている。このことは台湾のEV技術と英国のCAV技術が相互補完の関係にあり、双方にとってメリットを見出すことができる分野であることを示している。
陳副総統は最後に、英国は脱EU（欧州連合）によって新たな貿易政策を模索しており、台湾はこの機会にさまざまな機会を提供することができるだろうと述べた。