2024/05/03

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台湾初、パイワン族中心の教科書を外国人も評価

2018/03/22
屏東県が、同県で多くが暮らす先住民族パイワン(排湾)族を中心にすえた教科書の開発に取り組んでおり、海外の教育関係者や政府関係者から高く評価されている。写真は21日、同県が編纂した様々な教科書を紹介する関係者たち。右から2人目は屏東県先住民族局の伍麗華局長。(中央社)
台湾南部・屏東県でその多くが暮らす先住民族パイワン(排湾)族は、台湾における先住民族のうち、アミ(阿美)族に次ぐ大きなエスニックグループである。屏東県では3年前にパイワン族を中心とした教科書の開発に着手。同県三地門郷の屏東県地磨児民族実験小学(小学校)をサンプル校とし、1年生から3年生を対象に、パイワン族語のコースばかりでなく、国語、英語、算数、自然の教科書もパイワン族の暮らしを背景にして編纂した。編纂者にもパイワン族の人を多く採用、イラストなどの編集もパイワン族のアーティストと長老の4人が務めた。
 
屏東県「原住民処(先住民族局)」の伍麗華処長(局長)は、へき地と首都の台北市で同じ教科書を使ったからといって同様の学習成果を期待するのには無理があると指摘する。欧米の観点や台北の観点を用いた場合、へき地は「最果ての地」とならざるをえない。へき地や先住民族の主体性を発揮させ、子どもたちが慣れ親しんだ物事を教科書に盛り込んでこそ、授業はわかりやすくなり、子どもたちの勉学への興味にもつながるのだという。
 
例えば子供たちが「妙」や「飯」といった字を学ぶ文章のタイトルは「奇妙的vaqu(奇妙なアワ)」。内容は、昔の人は1粒のアワからたくさんのアワめしを作ることができたという伝説になっている。また、算数で子どもたちに数字を学ばせる場合、まず森での物語を紹介し、それから1頭のイノシシ、2羽のクマタカ、3頭のクロクマ、4匹のサルなどと教えていくのだという。
 
教材は3年間にわたって実験を進めながら修正を重ね、テストと大学教員による分析の結果、生徒たちの良好な学習成果につながっていることが確認された。これによりこうした子どもたちは、先住民族文化を学ぶことだけを目的とした特別な教材を使う必要がなくなる。
 
このプロジェクトは中華民国政府で先住民族政策を担う「原住民族委員会(先住民族委員会)」、教育部(日本の文科省に類似)国民教育及び学齢前教育署、国家教育研究院の重視と支持を受けており、先住民族委員会ではこれらの教科書をインタラクティブな教材に電子化するのをサポート。屏東県によると、先住民族のいる国の教育関係者や政府関係者が地磨児民族実験小学を見学に訪れてはパイワン族を中心とした教材に驚き、参考のためにと本国に持ち帰っているという。
 
パイワン族を中心とした英語教材を編纂したイギリス人、Danielさんは先ごろロンドン大学に招かれて教科書編纂の経験を紹介した。数多くの教授や大学院生がその研究に興味を示し、屏東県訪問も計画している。
 
これらの教科書のうちすでに完成しているのは1年生から4年生までの国語、英語、算数、自然。今年は国語と算数で6年生までの教科書の編纂を全て終え、屏東県内でパイワン族の子どもたちが学んでいる、より多くの学校に提供していくということ。
 
 

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