2024/05/05

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「正体漢字」が変えた運命、タイ北部の華人に台湾留学の機会

2018/08/15
タイ北部の発展に協力するため、台湾の複数の大学が地元の華人学校で学ぶ優秀な生徒に対し、奨学金を提供して台湾留学の機会を与えている。写真は華人学校で学ぶ生徒たち(右側)の面接をする台湾の各大学の教員(左側)。(中央社)
台北駐タイ経済文化弁事処(タイにおける中華民国の在外公館)は10日から15日までの期間、台湾の複数の教育機関を率いて、タイ北部のチェンマイやチエンラーイを訪問する事業を実施している。
 
タイ北部には、国共内戦によってこの地に移住した国民党軍の子孫が多く住む。この訪問団に参加する7つの大学の一つ、私立静宜大学(台湾中部・台中市)は、地元で開催された「正体漢字文化節」で成績優秀だった段応敏さんに対し、奨学金を提供し、台湾留学の機会を与えることを決めた。「正体漢字文化節」とは、台湾で使用されている正体漢字(いわゆる「繁体字中国語」)を主軸とし、その書き取りや聞き取り、書道、中国語のスピーチ、歌唱、タイピング、読解力などを競うイベント。海外華僑に対する正体漢字の伝承を目指し、世界各地で開催しているもの。
 
段応敏さんは、「まだ台湾留学の心の準備ができていない」と驚きながらも、奨学金が得られることはとても嬉しく、英語の重要性を感じており、できればもっと英語の勉強がしたいと抱負を語った。また、姉の段応玲さんも一緒に台湾に留学することを希望している。
 
姉の段応玲さんは高校卒業後、現在はチエンラーイにある華人学校の幼稚園で教員をしている。「正体漢字文化節」ではスピーチ部門で優勝した経験を持つ。将来は大学に進学し、国際貿易について学びたいと考えているという。
 
タイ北部の山岳部にある華人学校はいずれも教育資源が乏しく、ほとんどの生徒が自分の将来を思い描くことができずにいる。高校卒業後、大学進学の機会を得られる生徒は極めて少ない。これは、家庭の経済問題や、こうした華人が無国籍であるだけでなく、生涯設計について指導したり、適性診断を行うような支援体制が不足したりしていることも要因となっている。
 
私立元智大学(台湾北部・桃園市)は、タイ北部の華人学校高等部を首席で卒業した生徒1名に、4年間の奨学金を提供するという枠を10個提供している。国立高雄餐旅大学(台湾南部・高雄市)と私立静宜大学はそれぞれ定員2名の奨学金制度を、慈済学校財団法人慈済大学(台湾東部・花蓮県)は定員3名の奨学金制度を設けている。
 
台北駐タイ経済文化弁事処の童振源代表(大使に相当)は、「タイ北部の華人は中華民国の資産であって負債ではない」と強調。また、「これまでもタイ北部の華人教育の発展に力を入れていたが、教育は『国家百年の大計』である。教育によってこそ、未来を変えることができる。中華民国政府が推進する『新南向政策』は『人を以って本と為す』、『双方向の交流』が基本であり、タイ北部の優秀な華人を台湾に留学させることは、彼らが卒業後、タイに戻り現地の産業発展に尽くしたり、タイに進出する台湾企業を手助けしたりするきっかけにもなる。人材をタイに残すことができれば、地元の産業発展につながり、現地の生活を改善することにもつながる」とその意義について語った。
 
 

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