2024/04/28

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台湾人女性、調香師目指してフランスで修業

2018/08/15
台湾出身の何承涵さん(写真)は、世界最大の香料メーカーであるジボダン(Givaudan)の調香師養成クラスに合格した初めての台湾人。調香師となり、アジア人女性に似合う香りを作り出すことを目指している。(中央社)
世界最大の香料メーカー、ジボダン(Givaudan)の実験室にはさまざまな香りが溢れる。数千種類に上る原料は、必ずしも良い香りとは限らない。だが、適切な調合によって、人々に好まれる香りを作り出すことができる。どんな香りが生まれるかは、すべて調香師(パヒューマー)の腕次第だ。
 
ジボダンは食用品や日用品の人工香味料メーカーだ。本社はスイスにあり、世界各地に支社や工場を持つ。パリの北西部に位置するアルジャントゥイユ(Argenteuil)という街にあるのもその一部。ここには調香師の育成機関がある。
 
育成機関とは言うものの、実際にはジボダンの人材育成クラスである。香りに関する産業に従事したいと希望する若者がここに集まる。採用されれば給料も支給されるため、同社の従業員と変わらない。
 
ここで学ぶ一人の台湾人女性がいる。何承涵さんは、申込み、面接、それから採用されるまでに約半年の歳月を費やした。さまざまな国に飛び、さまざまなレベルの管理職が立ち会う面接試験に参加した。それに、嗅覚試験に合格する必要もある。さまざまな香りを閉じ込めた瓶の中から、同じ香りの組み合わせを探し出すという試験だ。
 
1988年生まれの何承涵さんはこの試験に合格し、ジボダンの人材養成クラスに採用された最初の台湾人となった。現在、彼女が所属する実験室で育成訓練を受けているのは、わずか8名である。
 
研修は4年に及ぶもので、何承涵さんは最初の一年間、シンガポールで研修を受けた。その後の2年間はパリ中心部から13㎞ほど行ったところにあるアルジャントゥイユで、ジボダンの調香師に指導を仰いだ。9月からは米ニューヨークへ渡り、最後の1年間の研修を受けることになっている。
 
何承涵さんはもともと台湾で外国文学を学んでいた。その後、イギリスでファッション・マーケティングを学び、香水産業と深く関わりを持ち、興味を持つようになった。こうして、フランス南部にあり、香りの都と呼ばれるグラース(Grasse)へ行き、香水について学んだ。その後、ジボダンの人材養成クラスに入った。
 
ジボダンの人材養成クラスでまず直面したのは、500種類の基本的な香りを覚えるという難題だった。試験ではそのうち20種類が抽出され、これらの種類を直ちに判別しなければならない。「例えば一口に麝香(じゃこう)といっても、私たちのリストには十数種類あります。私にとって、これは非常に難しいことです。麝香はしばらく時間を置かないと香りが出てこないからです」と何承涵さんは話す。しかし、いまではこうした香りはすべて彼女の脳内のデータベースに記憶されている。
 
また、嗅覚の道具となる鼻の状態を良く保つため、なるべく風邪をひかないようにしなければならない。普段から辛い物や、味の濃い食べものを食べるのを控え、香水もあまり使わない。香りをかぐときの邪魔になるからだ。
 
ニューヨーク行きを目前にして、何承涵さんは研修3年目の「期末試験」として、人生初のオリジナルの香水を作り上げた。それは、幼い時代を過ごした南投県(台湾中部)中興新村で、家族と一緒にウーロン茶を淹れて飲んだときの楽しかった日々を思い出させるものだ。1年近くの歳月をかけてウーロン茶の香りを調合し、これを「驚蟄」と名付けた。トップ・ノートは果物のライチの香り、ミドル・ノートはジャスミンの香りになっている。
 
目標とするのはフランス出身でエルメスの専属調香師ジャン=クロード・エレナだ。彼の調香哲学は非常にシンプルだ。「簡単なことこそ、最も難しい」という考えを信奉している。彼はたった200種類の原料の組み合わせで、特色を持った香水を次々に生み出している。
 
調香師としての訓練を受けて3年になるが、何承涵さんはまだ自分の哲学を見つけ出せずにいるという。しかし、調香師になりたいという目標は明確だ。目指すはアジア人女性に似合う香りを専門にデザインする調香師だという。「まだ自分は学習途中です。いつの日か、自分だけのスタイルを作り出したい」―何承涵さんはそう語る。
 

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