2024/05/07

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国立故宮博物院の徒弟制度による修復技術者、数年後にはゼロに

2018/10/12
中華文化総会が様々な職業につく「職人」の姿を追い求めるドキュメンタリー『匠人魂』の最新作では、国立故宮博物院登録保存処の二代目修復師、頼清忠さん(写真)を紹介している。(中華文化総会提供、中央社)
政府が出資し、蔡英文総統が会長を務める社団法人の中華文化総会(THE GENERAL ASSOCIATION OF CHINESE CULTURE)は様々な職業につく「匠(職人)」の姿を追い求め、ドキュメンタリー『匠人魂』シリーズを制作している。11日には第13作目となる国立故宮博物院編、『歳月修復師』を発表した。この映像では同博物院登録保存処の二代目修復師、頼清忠さんを紹介している。頼さんは1974年、師匠の林茂生さんに連れられて国立故宮博物院に加わり、公文書及び写本や版本など文書史料の修復を学ぶことで歴史的な文書や記録修復の道に足を踏み入れた。
 
『歳月修復師』では、国立故宮博物院における師匠から弟子への技術継承の感動的な物語が紹介される他、修復技術者が修復対象を常に自らの命、そして年老いた病人と見なしてきめ細かくケアしている姿を見ることが出来る。過去44年来、頼清忠さんは辛抱強さと情熱を頼りに、虫に喰われて穴だらけになった文書史料の修復を一冊また一冊と行ってきた。頼さんは数年後には勤続年数50年で退職する予定で、修復技術者の世界における特殊な徒弟制度も姿を消すことになる。
 
国立故宮博物院の初代修復師である林茂生さんは1961年から同博物院が収蔵する品々の修復に協力。1974年には頼さんを同博物院に引き入れ、各材料の異なる特性の研究、材質に応じた柔軟な対応、根本的な構造からの修復に努めた。
 
林さんは2001年に引退したが、この師弟が修復作業に向かう際には常に、「文書史料には霊が宿っている」という考えから人に対するのと同じ方式で修復対象に接し、修復の過程を詳しく記録することにしている。破損箇所の修復ではまず毛筆で糊を塗り、裏から紙を当てることで紙の厚さは増やさない。さらに閲読の邪魔にならないところには修復の痕跡を残す。未来の修復師が過去に行われた修復について知り、その時の最新技術で修復しなおせるようにするためであり、修復はこうして日々進歩していくのである。
 
頼清忠さんは、「修復する時には大きなやりがいを感じる。人が、文書の表面が完ぺきに仕上がっているかだけに注意している時、修復師はそれを自分の命とみなし、年老いた病人とみなして細やかにケアしている。全ての修復師が毎日考えていることは、こうした文化財を大切にし、破損や実務、そして技術を完全に記録していくことだ。それが我々の使命なのだ」と話している。
 
『匠人魂』第13作の『歳月修復師』は動画投稿サイト、Youtubeで見ることが出来る。
 

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