すでに60年以上歌い継がれている『緑島小夜曲』は台湾で初めてレコード化された標準中国語のオリジナルソング。政治的迫害を受けた人たちの心情を歌ったものとされてきたが、実は音楽家の周藍萍氏がその妻、李慧倫さんのために書いた曲だった。周藍萍氏の娘の周揚明さんは13日、父親の姿を記録したドキュメンタリー、『音楽家・周藍萍』を携えて『緑島小夜曲』が生まれるきっかけとなった台北私立金甌女子高級中学(高校、台湾北部・台北市)を訪問した。
当時、軍歌の指導のため金甌女子高級中学に招かれた周藍萍氏は、高校2年生だった李慧倫さんに一目惚れ。交際を申し込むも断られ、最後に『緑島小夜曲』を書いて李さんの心をつかむことに成功したという。周揚明さんによれば、『緑島小夜曲』のタイトルと歌詞にある「緑島」は「台湾」を指す。周藍萍氏は台湾にやって来た当時、「この島は緑のイメージが強い」と感じていたそうで、このため「緑島」が指すのは「台湾」だと判断できるのだという。
台北市立交響楽団(TSO)は12月21日と22日に、今年の「台北市音楽季」(台北市音楽フェア 8/22~12/22)のフィナーレとして『聲情詠戯-周藍萍的台湾小夜曲』コンサートを開催する。「聲情詠戯」は「声と心で人生を歌う」といった意味にとれるが、「深情永続(永遠に続く愛情)」ももじっている。コンサートでは『緑島小夜曲』、『回想曲』、『梁山泊與祝英台』、『大酔侠』など、周藍萍氏の作品の数々が演奏される。
周藍萍氏は中国大陸から1人で台湾に渡って来た。クラシックのテノール歌手だったが、『緑島小夜曲』を生み出したことで台湾の流行歌の創始者となった。また、音楽を担当した映画で最も広く知られているのは、中国大陸・安徽省で生まれたとされる演劇で、高い音域で歌うのが特徴の「黄梅調」のミュージカル『梁山泊與祝英台』。周氏はその生涯において、台湾の映画賞であるゴールデンホースアワード(金馬奨)の最優秀音楽賞を3度、アジア太平洋映画祭での最優秀音楽賞を1度受賞している。