2024/04/28

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政治

海軍が管理人の「北方澳進安宮」、媽祖さまが軍港見下ろし兵士ら守る

2019/02/18
宜蘭県蘇澳鎮にある「北方澳進安宮」で祀られるのは媽祖さま。海軍の基地内にあるため廟の管理人など全ての職務を軍人が兼務。大きな「海軍媽祖」像(右)は兵士たちを見守っている。(中央社)
信仰は常に人々の心のよりどころである。内政部(日本の省レベル)の統計によると、現在台湾全土にある廟(道教の寺院)は合わせて1万3,483カ所。新しい年や節句を迎える時にはいつも願い事をする人々であふれかえり、線香の煙が立ちこめて大変賑やかである。
 
しかし、一般の人がお詣りしようとすると許可を取らなければならない廟がある。この廟のさらに特殊な点は、歴代の「廟公」(廟の管理人)はいずれも軍服を着て、肩章に星が輝く海軍少将が兼任してきたことである。その廟とは、台湾北東部・宜蘭県蘇澳鎮にある海軍基地内の「北方澳進安宮」。「海軍媽祖」(媽祖は道教の女神。航海の安全を守るとされる)を祀り、海軍の兵士たちの安全を守っている。
 
蘇澳鎮にある進安宮は「南方澳進安宮」と「北方澳進安宮」の二つに分かれる。1974年、海軍は北方澳での海軍基地建設を決定。このため現地の住民は集団で村を移すことになった。そこで当時の村人は「ポエ占い」を使って、村に祀られていた媽祖さまに、一緒に南方澳にやって来るかどうかのお伺いを立てた。しかし媽祖さまは元の場所を離れるのを嫌がったため、海軍基地内から南方澳へと媽祖さまを分霊するしかなかった。それが現在の「南方澳進安宮」である。
 
「北方澳進安宮」は台湾で唯一、管理委員会を軍が組織した廟であり、管理委員会の主任委員は現地の指揮官が兼任することになっている。また、副主任委員や財務担当者などもみな、軍の人員が担当しており、まさに「校長兼撞鐘」(校長が授業の鐘を鳴らす=複数の役割を全て1人で行う。ここでは軍人であるにもかかわらず、廟の運営も全て行うこと)なのである。
 
基地内であることから参拝客は自由に写真を撮ることが出来ない。軍ではこのため、高さ約3mの可愛らしくデフォルメされた媽祖さまの像を作ることを考えた。まず「ポエ占い」で媽祖さまの同意を得てから経費を工面し、多くの人の協力を経て2010年1月に完成、同25日に除幕式が行われた。この媽祖さまは青石で作られており、重さは約11.5トン。参拝客にとっては記念写真の撮影ポイント。そして海軍の兵士たちにとっては、入港する際、また巡邏任務から帰還する際、山の中腹で、「海軍媽祖」が笑顔で出迎える姿を目にすることで、無事を実感し、心の安らぎが得られるシンボルである。
 
「進安宮」の関係者によると、可愛らしい媽祖さまの像を作る中で、職人は両ほほをピンクに染める時、濃くするか薄くするかで悩んだ。「ポエ占い」で媽祖さまが決めたのは「極めてシンプルなスタイル」で、職人はそれから安心して顔料を媽祖さまの両ほほに塗ることが出来た。
 
一般の人々にとっては言うまでもなく、常に戦備に努め、台湾海峡の平和を守っている兵士たちにとって信仰はなおのこと、心のよりどころなのである。
 
 

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