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故・邱剛健氏の処女作『疏離』、53年ぶり上映

2019/02/21
台湾国際ドキュメンタリー映画祭(中国語は台湾国際紀録片影展、TIDF)は今月23日より台中を皮切りにスタートするTIDF巡回展で、1960年代に制作され、長年行方がわからなくなっていた故・邱剛健(1940年-2013年)監督の前衛短編映画『疏離』を上映する。実に53年ぶりの上映となる。(国家電影中心提供、中央社)
昨年、1960年代の台湾前衛映画を振り返るというテーマで数々の作品を上映した台湾国際ドキュメンタリー映画祭(中国語は台湾国際紀録片影展、TIDF)が、国家電影中心(台湾フィルム・インスティテュート)の収蔵資料の再調査で、1960年代に制作され、長年行方が分からなくなっていた故・邱剛健(1940年-2013年)監督の処女作『疏離』を発見した。今月23日より台湾中部・台中を皮切りにスタートするTIDF巡回展で53年ぶりに上映する。
 
2013年に亡くなった邱剛健監督は、台湾や香港で名の知られた映画監督、脚本家だった。香港の映画監督である許鞍華(アン・ホイ)女史や関錦鵬(スタンリー・クワン)氏のために脚本を手掛けたり、中国語映画のアカデミー賞とされる台湾の「金馬奨(ゴールデンホース・アワード)」や香港の「金像奨(香港フィルムアワード)」などで最優秀脚本賞を何度も受賞したりしている。香港に拠点を移すまでは、台湾で前衛芸術家として活躍していた。1965年には、荘霊氏、黄華成氏、陳映真氏、劉大任氏らと雑誌『劇場』を創刊し、西洋の近代劇場や映画理論を大量に翻訳・紹介し、台湾の現代文化に大きな影響を与えた。
 
1966年、『劇場』の編集者らは西洋の映画を紹介するだけでは飽き足らず、3回の映画上映会を開催した。上映会では、編集者らがそれぞれ制作した前衛的な短編映画も上映。これらは台湾の映画史上、最初に作られた前衛映画となった。
 
邱剛健監督が制作したのは7分間の16㎜フィルムモノクロ短編映画『疏離』だった。内容は壁を這う毛虫、自慰行為にふける半裸の男性、奇怪な交通事故と死を描いた映像と字幕によって構成されおり、若者の疎外感を暗喩した作品となっていた。
 
しかし、上映会の会場を提供した耕莘文教院(台湾北部・台北市)の傅良圃神父が、映画に自慰行為のシーンが含まれていることに抗議して、上映は取り止めになった。このため、上映会前に行った試写会と、その後に幼獅文芸(台北市)が主催した「現代芸術祭」で上映講座を行ったのを最後に、この映画が上映された記録は残っていない。その後、フィルムの行方が分からなくなってしまったことから、研究者たちは雑誌『劇場』第5期に掲載されている写真や脚本、撮影メモなどを頼りに内容を想像するしかなかった。
 
過去の文献の多くには『疏離』が8㎜フィルムで撮影されたと誤って記録されていたため、国家電影中心はこれまで『疏離』のフィルムを探し出すことが出来ず、フィルムは長い間、紛失したものと見られていた。
 
しかし、台湾国際ドキュメンタリー映画祭の主催機関が2018年末、国家電影中心が収蔵する資料を再調査したところ、『疏離』のコピーを発見した。その後、国家電影中心が高画質によるデジタル化を実施。『疏離』は今年のTIDF巡回展の「台湾切片―想像式前衛:1960s的電影実験」というコーナーで上映されることになった。
 
TIDF巡回展は今月23日より、台中市を皮切りにスタートする。その後、彰化県(台湾中部)、屏東県(台湾南部)、花蓮県(台湾東部)、台東県(台湾南東部)、桃園市(台湾北部)、台南市(台湾南部)を巡回する。
 

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