2024/05/03

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国光劇団の『費特児 Phaedra』、京劇と南管による新たな実験作品が誕生

2019/02/22
国立京劇団の国光劇団とシンガポールの湘霊音楽社が協力し、ギリシャ神話とフランスのラシーヌの名作『フェードル』を題材とした実験的な新作『費特児 Phaedra』が誕生した。左から監督の戴君芳さん、脚本の趙雪君さん、ダンサーの呉建緯さん、主役の朱勝麗さん、振付の張暁雄さん、国光劇団の張育華団長。(文化部サイトより)
文化部(日本の省レベル)国立伝統芸術センター傘下の国立京劇団である国光劇団(GuoGuang Opera Company)とシンガポールの湘霊音楽社(Siong leng Musical Association, SLMA)がこのほど協力、ギリシャ神話と17世紀のフランスの劇作家、ラシーヌの名作『フェードル(Phaedra)』を題材とした実験的な新作『費特児 Phaedra』を創り出した。京劇と伝統音楽の「南管」、現代舞踊を融合させたものだという。
 
国光劇団は過去に日本の横浜能楽堂と提携、『繡襦夢』合作プロジェクトを実現させており、『費特児 Phaedra』はこれに続く国と分野の違いを超えた試み。湘霊音楽社は1941年創立の団体で素朴な南音(南管)芸術を保存すると共に、伝統の継承と新たな挑戦の発揚に努めている。
 
『費特児 Phaedra』はギリシャ神話と西洋における新古典主義時代の作品を題材に、設定を東洋の「上古」時代の部族に置き換えた。「上古」は古代中国の殷・周・秦・漢の時代。脚本は趙雪君さんが担当。ヒロインである王妃は国王の妾の子で部族の異なる王子を愛するようになる。しかし、自分の子と部族の生き残りも考慮せねばならず、理性による自制と情欲からくる衝動の間でもがき苦しむ複雑な内面的心情が表現される。監督を務める戴君芳さんによると、『費特児 Phaedra』では音楽の表現力が形式の異なる芸術に対話をさせている。伝統的な曲調からも離れて歌の部分を改めて構成しなおしたとのことで、京劇の歌い方と「南管」をミックスした上で、俳優の体を使った演技が加わる形になっている。舞踊の部分では著名な振付師である張暁雄さんが参加して現代舞踊の要素を加えており、それが京劇並びに「南管」と融合することで、分野を跨いだ実験的な新作が出来上がった。
 
国光劇団の代表的な女優、朱勝麗さんが「費特児」王妃と侍女の2役を、そして台湾の現代舞踊団体、野草舞踏聚落(The Tussock Dance Theater)の創設者で芸術総監督でもある呉建緯さんが王妃の溺愛する王子を演じる。2人の場面では対話は皆無で身体を使った演技のみ。「南管」の歌い手である林明依さんの歌声が京劇と「南管」、現代舞踊という異なる芸術の対話を可能にする。『費特児 Phaedra』では国光劇団とシンガポールの湘霊音楽社それぞれが持つスタイルと伝統の真髄を残しつつ、京劇と「南管」の歌の部分を改めて構成しなおすことで、それぞれの特色が存分に発揮されるようになっているとのこと。
 
 

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