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公共テレビのドラマ『我們與悪的距離』、好評のため続編制作へ

2019/04/22
公共テレビ(公視、PTS)などが制作したドラマ「我們與悪的距離」の最終回が21日に放送された。視聴率がうなぎ上りだったことから、公共テレビでは続編の制作を決めている。(公共テレビ提供、中央社)

台湾の公共放送である公共テレビ(公視、PTS)、映画配給及びオンライン映画・ドラマ配信サービスのCATCHPLAY、それに米ケーブルテレビ放送局HBOの傘下であるHBOアジアによる共同制作ドラマ『我們與悪的距離(英題:The World Between Us)』の放送が21日に終了した。全10話で製作費4,300万台湾元(約1.5億日本円)が投じられたこのドラマは、1つの無差別殺人事件を、事件の加害者、被害者、弁護士、マスコミなどさまざまな立場の視点から描いたもの。視聴率がうなぎ上りだったことから、公共テレビでは続編の制作を決めている。

『我們與悪的距離』は3月24日、第1話と第2話を連続で放送した。初回から「涙なくしては見られない」というシーンが多く、話題を呼んだ。初回の放送では、事件の加害者の両親が被害者の葬儀場に現れるシーンがあり、加害者の父親が「どうやって謝ればいいんだ。どうやって償えばいいんだ」と力なく話す場面は見る人々の涙を誘い、この日の瞬間最高視聴率を打ち出した。台湾最大規模のインターネット掲示板「PTT」やさまざまなインターネットのサイトでも話題となり、検索エンジン「Google」台湾版では「毎日の検索トレンド」1位に急上昇した。また、1分間の瞬間最高視聴率1.14%を記録した。

3月31日に放送された第3話と第4話でも再び高視聴率をマークし、それぞれ1.21%、1.49%を記録した。視聴者のうち「仕事を持つ女性」の視聴率は3.4%に達した。AGBニールセンの集計によると、この視聴率は台湾7位で、当日のテレビドラマでは1位だった。

『我們與悪的距離』の視聴率はその後も伸び続け、第5話は1.45%、第6話は1.84%に達し、当日放送された全チャンネルのドラマ部門でそれぞれ1位、2位となった。CATCHPLAYではオンライン視聴者が30倍を超えたため、アクセス増加によるシステム障害が発生し、緊急に復旧作業に追われた。

第7話の視聴率は2.15%、第8話の視聴率は2.19%とついに2%の大台に乗った。掲示板サイト「PTT」ではドラマを視聴しながら内容について議論するというスレッドが立ち、最高6,888名のユーザーが同時視聴した。

公共テレビは2017年、HBOアジアと初めて共同制作ドラマ『通霊少女(The Teenage Psychic)』を制作した。台湾ドラマ初の国際合作となったこのドラマは、アジア20カ国・地域以上で放送された。その後、海外の動画配信サイトが台湾のドラマ市場に注目するようになり、合同制作や国際合作といった形式で、新たなドラマ作りに挑戦している。

『我們與悪的距離』はHBOアジアとの協力にとどまらず、近く北米のHBOの配信プラットフォームにも進出し、海外市場へ進出する予定だ。欧州諸国やその他の海外についても版権交渉を行っているという。

『我們與悪的距離』は高視聴率をマークし、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)での評判も良かったことに加え、米インターネット・ムービー・データベース(IMDb)のレビューでも9.5点と高く評価された。これは、『通霊少女』、『魂囚西門(GREEN DOOR)』、『麻酔風暴(Wake Up )』など近年好評だった台湾ドラマを大きく上回る評価で、作品の内容に共感を覚える視聴者が多かったことが伺える。

『我們與悪的距離』は、台湾のエミー賞とされるゴールデンベル・アワード(金鐘奨)を受賞したことのある呂蒔媛さんが脚本を手掛けた。呂蒔媛さんはこの作品のため、フィールドワークに4か月費やし、さらに7か月かけて脚本を完成させた。林君陽(Lin Chun Yang)さんが監督を務め、賈静雯(アリッサ・チア)さん、温昇豪(ジェームズ・ウェン)さん、呉慷仁(ウー・カンレン)さん、周采詩(トレーシー・チョウ)さん、林予晞(アリソン・リン)さんら実力派の役者がメインキャストを務めた。

この作品は「自分にとって非常に重要なものとなった」と話す呂蒔媛さん。重大な事件が発生したとき、「わが子がその犯人だったらどれだけ恐ろしいことだろう」と考えたのが、この物語の着想につながったと言う。子どもを持つ母親として、自分の子どもが犯罪者となったとき、自分の人生は何が間違っていたのかを振り返るだろうと考えた。呂蒔媛さんはこのドラマを通して、「教育」の重要性を見直して欲しいと期待を寄せている。

また、プロデューサーの林昱伶さんによると、ドラマのタイトルである『我們與悪的距離』が強調するのは「我們(=我々)」だと話す。タイトルにある「悪」とは、どの人の心の中にもある「悪念」であって、決して1人の犯罪者を指すのではない。「多くの人が自分は当事者ではないと考えるだろうが、事件をじっくり読み解いてみると、実際には関係者であることがあるのだ」と林昱伶さんは説明する。この題材は多くの敏感な話題と関係があり、且つ「無差別殺人事件」を取り扱ったものである。林昱伶さんは「現代社会ではこうした悲劇が発生することが増えている。しかも、台湾だけが抱える問題ではなく、近年は米国や日本などでも頻発している。このため、このドラマを通して現在の社会環境や構造、それに雰囲気によって構成される問題を直視して欲しい」と述べている。

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