2024/05/07

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台湾文学も「新南向政策」、葉石涛の短編小説がマレー語に

2019/04/24
国立成功大学中文系の陳益源教授(左)、台南市文化局の周雅菁副局長(左から2人目)、マレーシアのマラヤ大学中国文学科の潘碧華主任(右から2人目)、台北駐マレーシア経済文化弁事処文化組の周蓓姖組長(右)は20日、マラヤ大学で葉石涛の短編小説のマレー語版完成を発表した。(中央社)
台湾南部・台南市の成功大学中国文学系(=中国文学科)とマレーシアの最高学府であるマラヤ大学中国文学科はこのほど、台南市文化局の支援を受け、台湾の作家である葉石涛の短編小説をマレー語に翻訳した。今後は、台湾とマレーシアの文化交流と理解促進に努めたい考え。
 
台湾文学の「点灯夫」と呼ばれる葉石涛は、台湾の文化の都である台南を代表する文学者。生涯のうち60年余りを創作活動につぎ込み、100点を超える書籍を出版した。作品は小説、評論、散文、随筆、手紙、回顧録、文学史の専門書、翻訳など多岐に及ぶ。日本占領時代の台湾と戦後の2つの時代を生きた文学者でもあった。2008年12月、83歳で逝去した。
 
台南市文化局が実施する「葉石涛短編小説翻訳計画」とは、葉石涛の作品の中から『三月的媽祖』、『天上聖母的祭典』、『玫瑰項圏』、『賺食世家』、『葫蘆巷春夢』、『西拉雅族的末裔』、『唐菖蒲與小麦粉』、『邂逅』など短編小説8点を厳選し、マレー語に翻訳するというもの。
 
翻訳作業にはマレーシア華僑の学生7名と、中国語に精通したマレー人学生が関わった。またその過程で、あるマレー人作家による協力も得られた。関係者によると、このマレー人作家は、仮翻訳の作品を読んで内容に興味を持った。しかし、完成後の翻訳に、「信・達・雅(清末民初の啓蒙思想家である厳復が提唱した翻訳の原則。すなわち、原文に忠実で、筋が通っており、文章が美しいこと)」が足りないと感じた。このため、自ら申し出て、わずか20日足らずで翻訳文を修正した。これにより、作品によりマレー文学らしさが注入され、マレーシアの読者がより内容を理解できるようになった。
 
これらの短編小説は台湾の媽祖文化やキリスト教、飲酒、豚肉の販売など、マレー人の宗教習慣とは異なる描写が出てくる。しかし、この翻訳計画を担当した成功大学中国文学系の陳益源教授は、「文化交流は本来の、リアルな自分と、異なるエスニックグループが友達になるためのリアルな往来でなければならない」と考えており、「小説の中にはマレー人が生活には持ち込まないような習慣、例えば信仰の対象や飲食習慣などが描かれている。しかし、これらは台湾人が台湾の生活を描写したもので、マレーの人々も理解できると思う。こうしたリアルな描写を避けてしまうと、葉石涛は葉石涛ではなくなってしまう。だから我々は、最も誠実な方法で、新しい友人たちに私たちを理解してもらいたいと考えた」と説明している。
 
また、これらの短編を選んだ理由について陳益源教授は、「台湾とマレーシアは戦後、同じような発展の歩みを経験し、また日本の統治を受けた過去を持つ。多くの庶民が大きな時代にほんろうされながら苦しい生活を送り、そこには血や涙、苦労があった。これに共感する人が多いと考えた」からだと話している。
 

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