2024/05/09

Taiwan Today

政治

台湾で初めて中国語書籍取り扱った書店、政府の補助で保存・再生へ

2019/05/13
基隆市にある「自立書店」(写真)は創業72年。台湾で初めて中国語書籍を取り扱った書店として知られる。このほど文化部の「保存・再生計画」の補助対象となり、修繕と再生が行われることに。(基隆市文化局提供、中央社)
台湾北部・基隆市で創業して72年の「自立書店」が文化部(日本の省レベル)による補助を受け、保存・再生されることになった。「自立書店」の創業者で現在101歳の陳上恵さんは1945年、国民政府の軍隊と共に中国大陸から台湾にやって来て基隆に定住。当時の基隆港は非常に繁栄していて活気があったという。
 
しかし、その頃、台湾には中国語の図書は無く、日本語で書かれたものばかりだった。陳さんは、文化の継承に空白期が生まれることを残念に思い、中国語の書籍を取り扱う書店を開こうと考えるようになった。そして1947年4月4日、「自立書店」は台湾で初めて中国語書籍を販売する書店として開業したのである。
 
「自立書店」は戦争が終わったばかりの時代から自由民主の現代へと経営を続け、基隆の姿を70年あまりに渡って見つめてきた。今では陳上恵さんの次の世代に受け継がれている。陳さんは台湾における中国語書籍の基礎を築いたのであり、台北市(台湾北部)で「本屋街」として知られる重慶南路書店街もほぼ陳さんが1人で生み出した場所だという。そして今、重慶南路書店街はすでに衰退の一途にあるが、基隆市の「自立書店」はびくともしていない。また、陳上恵さんは台湾における最年長の「鋸琴」(ノコギリ状の金属板を弓でこすって演奏する楽器。ミュージックソー)奏者。その音色と「自立書店」は基隆の多くの人たちにとって大切な思い出になっている。
 
文化部では潜在的文化資産としての価値を持つ歴史ある私有建築物を保存するため、「私有老建築保存再生計画」を始動、これまでに基隆市中正区の「海之丘」と同中山区の「陳医院」の修繕に補助金を拠出、その保存・再生を行うことを決定していたが、4月19日には基隆市義二路と信二路の交差点にある「自立書店」についても最終審査を終え、同様の対象とすることに決めた。「自立書店」には保存・再生のため、358万台湾元(約1,253万日本円)近くの経費が与えられる。
 
陳上恵さんは、「本当に素晴らしい計画だ!」と大喜び。陳さんは、「家族が老朽化した建物の外観を改善したいとずっと思っていた中、文化部の『保存再生計画』に選んでもらえた。天の時・地の利・人の和がそろうことで保存・再生の夢がかなえられる」と期待した。
 
「自立書店」は将来も書店としての経営が続けられる。陳さんの一家ではすでにコミュニティの形成に長く参与しており、「皮影戯」(影絵の人形劇)の普及にも力を入れてきた。修繕して整備されたスペースは将来、文化クリエイティブ製品の販売などに提供される他、日本占領時代の文物展も行い、「自立書店」が整理した歴史と文化的意義のある物品を展示していく。また、今後もコミュニティペーパー「哨船頭街報」の発行を続け、コミュニティ形成と郷土史研究に貢献していくことにしている。
 
 

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