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台湾と米国の研究チーム、MERSワクチンを開発

2019/05/15
台湾と米国の研究チームが開発したコロナウイルスに対するナノワクチンは、SARSの再来とも恐れられるMERSコロナウイルスに対する効果が期待される。(中央研究院提供、中央社)
台湾の最高学術研究機関、中央研究院生物医学科学研究所の胡哲銘特別研究員、国立台湾大学獣医学科の陳慧文准教授、米国テキサス州立大学で結成された国際研究チームは、最先端のナノテクノロジーを活用して、コロナウイルスの表面を人工的に模倣した「コロナウイルスに対するナノワクチン」の研究・開発に成功した。2003年に流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の再来とも恐れられる中東呼吸器症候群(MERS)の原因とされるコロナウイルスに対する効果が期待される。
 
研究成果は近日中に、科学雑誌「Advanced Functional Materials」に掲載される。また、開発技術は既に複数の国家において特許を申請した。
 
MERSは、未だに効果的なワクチンや薬品が開発されていないが、危険性の高い人獣共通感染症だ。MERS患者の死亡率は40%にも達すると言われており、欧州、米国、アジア、アフリカ地域で数千の感染例が報告されている。そのため世界中で恐れられており、世界保健機関(WHO)は、優先して取り組むべき重要性のある新興感染症の一つに挙げている。MERSコロナウイルス( MERS-CoV)の変異は急速で、対処するには効果的なワクチンを接種することが必須となる。
 
シェル構造を持った中空ナノ粒子の開発者でもある胡哲銘特別研究員はワクチンについて、「今回開発したナノ粒子ワクチンは、ウイルスに倣って、小さなサイズの抗体(ナノ抗体)を作り、コロナウイルスの表面にある王冠に似た突起を模倣した。シェル型ナノ粒子の表面は、コロナウイルスの表面に棘のように出ているスパイクタンパク質をかぶせた。さらに、粒子の内部には抗原性補強剤が含まれ、免疫細胞まで届き、抗原に対する免疫応答を増強させ、免疫機能を高めることができる」と説明した。
 
開発したナノ粒子ワクチンを実験用マウスに接種し、分析した結果、このワクチンは動物の体内にある免疫システムによって識別され、免疫反応を誘発し、血液中に効果的な抗体が作られ、300日以上維持することができた。同時にこのワクチンは体内にある免疫T細胞を活性化し、病原体への殺傷能力も発揮し、実験したマウスの生存率は100%だったという。

研究チームは、引き続きコロナウイルスに対するナノワクチン研究について、海外の研究機関と協力していくとした。今後は、霊長類を用いた動物実験で同ワクチンの有効性を証明し、臨床試験を進める計画だ。台湾の研究チームは、今回のナノワクチンの開発技術を積極的に運用し、インフルエンザワクチン、ジカウイルスワクチン、がんワクチンに関する研究・開発を進めていく方針だ。

同ワクチンは、「国立台湾大学・中央研究員によるイノベーション提携計画」及び科技部(日本の文部科学省に類似)の「台湾における重要な新興感染症研究計画」によるサポートのもと、研究・開発が進められた。また、米テキサス大学の医学分校の高度生物安全実験施設との提携によって、ナノワクチンの非臨床試験を実施、完了させた。また同ワクチンの開発は、2017年に科技部が開催した「未来のハイテク展覧会」で紹介されており、商品化すればかなり高付加価値商品になるとの期待が寄せられている。

研究成果の論文の全文は、「Viromimetic STING Agonist-Loaded Hollow Polymeric Nanoparticles for Safe and Effective Vaccination against Middle East Respiratory Syndrome Coronavirus.” Advanced Functional Materials doi:10.1002/adfm.201807616 (2019)」から閲覧できる。

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