2024/05/19

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人工硬膜の台湾生医材料公司、TPEx上場へ

2019/05/22
工業技術研究院(ITRI)からスピンオフしたスタートアップで、経済部(日本の経済産業省に相当)が実施する「科技発展専案計画」の助成を受けた台湾生医材料公司(TWBM)が、6月に台湾の証券取引所の一つであるタイペイエクスチェンジ(TPEx)に上場する。写真は同社が開発した人工硬膜を作るスプレーガン「Foamagen」。硬膜の損傷部分を素早くカバーし、人工硬膜を縫合する手間を省き、脳脊髄液漏出を防止することを同時に可能とする。(工業技術研究院提供、中央社)
経済部(日本の経済産業省に相当)が実施する「科技発展専案計画(Technology Development Program)」の助成を受けたスタートアップの台湾生医材料公司(TWBM)が、6月に台湾の証券取引所の一つであるタイペイエクスチェンジ(TPEx)に上場する。「科技発展専案計画」の助成を受けた医療器材分野のスタートアップが、タイペイエクスチェンジへの上場を果たすのはこれが初めて。
 
脳血管疾患(脳卒中)は台湾人の死因の第4位。台湾では平均すると44分に1人が脳卒中で亡くなっている。また、死に至らなくても、脳の手術はリスクが非常に高く、後遺症が残りやすい。医師は人工硬膜を使って脳脊髄液の漏出や脳組織の癒着を防ぎ、細菌感染や不正常な組織反応を引き起こさないようにしなければならない。それでも、脳脊髄液が漏出する確率は42%に達し、これが原因で傷口の癒合が遅れたり、細菌に感染したり、ひいては死に至ることもある。
 
財団法人工業技術研究院(ITRI)からスピンオフしたスタートアップの台湾生医材料公司は人工硬膜を作り出すスプレーガン「Foamagen」を開発した。同社の廖俊仁総経理によると、コカコーラの缶に充填する炭酸ガスやムースのヘアスタイリング剤などからヒントを得たもの。コラーゲンと高圧ガスを医療用容器に充填した上で、これをスプレーガンに装着する。スプレーガンを使用すると高い圧力がかかり、常温では液体だったコラーゲンがゲル状に変わる。これを脳の患部にスプレーすると、コラーゲンが体温と反応し、均一で高密度のムース状になる。コラーゲンは数十秒で固まるため、硬膜の損傷部分を素早くカバーし、人工硬膜を縫合する手間を省き、脳脊髄液漏出を防止することを同時に可能とする。なお、コラーゲンのpH値は3~4の酸性だが、固まると中性になるという。
 
この技術は世界各国で特許を取得しているほか、台湾の衛生福利部(日本の厚生労働省に類似)の認証を得て、台湾の医療機関でも使用を開始している。将来はアメリカ食品医薬品局(FDA)に臨床試験開始の申請を行い、全世界の患者が使えるようにしたい考えだ。
 
工業技術研究院の劉文雄院長は、「台湾生医材料公司は工業技術研究院からスピンオフしたスタートアップで、同社の成長を見ることができて大変うれしい」と喜ぶ。劉文雄院長によると、台湾生医材料公司は一般の消費市場と臨床の需要の両方をターゲットにしているだけでなく、従来の考え方とは違い、「台湾で研究・開発、世界各地で代理生産」というモデルを作り上げた。工業技術研究院は産業発展をけん引し、経済部が推進する「科技発展専案計画」の成果を挙げるという任務を担い、現在までに270の企業を誕生させてきた。そのうちバイオ医薬品分野のスタートアップは10社余りで、台湾のバイオ医薬品産業のために強固な基礎を築いている。
 
台湾生医材料公司によるタイペイエクスチェンジ上場は、バイオ医薬品産業にとって大きな意義を持つ。一つは、経済部が推進する「科技発展専案計画」の助成を受けたバイオ医薬品分野のスタートアップとして、初めてタイペイエクスチェンジ上場を果たす企業であること。これは、研究・開発期間が長いバイオ医薬品分野の技術が、「科技発展専案計画」の長期的な支援の結果、ようやく開花期を迎え、バイオ医薬品産業に新たなエネルギーを注入していることを意味する。
 
もう一つは、台湾生医材料公司が米シリコンバレーのハイエンド医療器材企業Incept社に注目され、2016年よりアライアンス提携を結んでいること。これは台湾生医材料公司にとって、シリコンバレーのハイエンド医療器材産業のサプライチェーンに参入するチャンスとなるだけでなく、「台湾のブランドを世界各国で代理生産する」という画期的なモデルを生み出すことになる。台湾の企業が自社開発したバイオ医薬品分野の成果が、世界レベルで高い評価を受けていることを意味している。
 

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