2024/05/03

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工研院と全宇生技が協力、「新南向」でグリーン経済のブルーオーシャンを開拓

2019/05/24
工業技術研究院が「セルロースの解重合による糖質生産」の技術を全宇生技控股有限公司に供与。マレーシアのアブラヤシを利用したバイオマスエネルギー開発に取り組んでいくことに。写真は同技術を説明した図。(中央社)
経済部(日本の経産省に相当)エネルギー局が支援する中、財団法人工業技術研究院(工研院、ITRI)が22日、全宇生技控股有限公司(All Cosmos Bio-Tech Holding Corporation)と「木質繊維素解聚産醣(セルロースの解重合による糖質生産)」の技術供与契約を結んだ。年内にマレーシアに生産規模1トン級のパイロット工場を建設するほか、将来は1万トン級で準商用規模の工場が立ち上げられるよう取り組んでいくと宣言。工業技術研究院の「セルロースの解重合による糖質生産技術」が農林資材を糖質に変換させることと、全宇生技がマレーシアで大量の農業廃棄物を確保していることを結び付け、マレーシアにおけるアブラヤシのEFB(EMPTY FRUITS BUNCH)をキシリトールやアミノ酸、あるいはエタノール燃料など付加価値の高い製品へと生まれ変わらせる。EFBとはヤシから果実部分を取り出した後に残る「ヤシ空房」のこと。
 
経済部の曽文生政務次長(副大臣)は、バイオマスエネルギーの利用とグリーン経済の推進は世界各国が先を争って取り組む学問になっているとした上で、工業技術研究院の「セルロースの解重合による糖質生産」技術は政府の進める「5+2産業イノベーション計画」におけるグリーンエネルギー技術のエネルギー創出部分となり、台湾自前のエネルギー開発を促進できるほか、台湾のグリーンエネルギー技術産業の国際的競争力の向上にもつながると指摘。そして、マレーシアとの協力によるセルロースの解重合による糖質生産パイロット工場及び準商用規模工場の建設は、台湾における将来的なバイオマスエネルギーの産業チェーンを資源面で支えるものとなり、バイオマスエネルギーの産業国際化に向けた大きな一歩になるものと期待した。
 
工業技術研究院による「セルロースの解重合による糖質生産技術」の成功は、経済部エネルギー局の「科技専案計画」(科学技術プロジェクト)から派生した成果であり、2013年の時点ですでに「科学技術産業のアカデミー賞」と称される「R&D 100アワード」に輝いている。マレーシアには大量のアブラヤシがあり、「セルロースの解重合による糖質生産」に極めて適している。今回の提携関係は、政府の循環型エコノミー政策にかなうものであるばかりでなく、「新南向政策」とも相互補完の効果がある。「新南向政策」とは、東南アジア、南アジア、ニュージーランド、オーストラリアとの幅広い関係強化を目指す政策。
 
「セルロースの解重合による糖質資産技術」では固形のバイオマスを糖質に分解し、さらにそれを発酵させることでバイオマス燃料にすることが可能。また、農林資材を原料とすることで、「耕地との間で土地を奪い合う」懸念も回避出来る。工業技術研究院と全宇生技の協力関係は2017年にスタート、アブラヤシのEFBを用いた「セルロースの解重合による糖質生産テスト」に取り組んだ結果、アブラヤシのEFB1キログラムから平均で0.5キログラムのキシロースとブドウ糖を創り出すことに成功した。類似した技術と比べてコストが30%低く、市場では大きな強みになるという。
 
全宇生技は台湾の実業家がマレーシアで創業し、実績を上げている企業。主にバイオ技術を使った配合肥料の研究開発、製造、販売を行っている。製品は主にアブラヤシ農園で使われていることから、同社はアブラヤシの残渣物を大量に確保できる優位性を持っているとのこと。
 
 

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