台湾出身でジンバブエ在住の朱金財さんが自らの天職として慈善活動に取り組んでいる。現在64歳の朱さんはかつて台湾で衣料品の事業を営んでいたが、1989年に南アフリカに移住。しかし治安が非常に悪く、台湾からの移住者はみな強盗に戦々恐々としていなければならなかったため、1995年に工場を全てジンバブエに移設した。ジンバブエは経済的に豊かではないが、物資が不十分で生活用品は飛ぶように売れた。朱さんはアパレル工場のほか、10軒あまりの商店をチェーンで経営するまでになった。
しかしジンバブエでは1997年末から1998年8月まで街頭デモが頻発し、参加者は暴徒化して商店を襲撃。朱さんの店舗はいずれもデモ行進のコース上にあったため商品は全て略奪された。工場も狙われ、工場にあった金庫は全て持ち去られた。朱さんは4,000万台湾元(約1億3,700万日本円)近い財産を失ったのである。
朱金財さんはしかし、現地の人たちは生活が困窮しているからこそ略奪に走ったのだと考え、辺境の人々を支援する慈善活動に取り組み始めた。現在では現地に4,200名のボランティアがいるという。朱さんはこうしたボランティアを率いて学校を訪れては衣料品や文具を配布すると共に食事も提供している。さらには白癬に罹っている学生の髪を剃って薬を塗ってあげることも。安価な学費で経営するある学校には簡易教室を建て、子どもたちがボロボロのテントの下や木陰で授業を受けなくてもいいようにしている。
今年3月、アフリカ東部を熱帯サイクロンのイダイ(Idai)が襲った。ジンバブエでは河川の水位が大幅に上昇し、橋梁が押し流された。特にチマニマニ(Chimanimani)は9割以上が壊滅。朱さんとボランティアたちは車いっぱいにパンと浄水剤を積み、10時間あまりかけて被害が深刻な被災地を訪れた。夜間は軍が設けた、水も電気も無い基地で野営、全ては物資を被災者に届けたいという思いからの行動だったという。被災地に入ると被災者たちが本当に助けを必要としていることがわかるという朱さんは、これからも慈善活動を天職として続けていきたいと話している。