2024/05/02

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政治

中国大陸からツマジロクサヨトウの幼虫が「飛来」、被害拡大を懸念=農業委員会

2019/06/12
苗栗県(台湾北西部)の飛牛牧場で8日、飼料用トウモロコシの葉に見慣れない虫体がいるのを来場客の一人が発見した。通報を受けて検疫を行ったところ、ツマジロクサヨトウの幼虫と断定された。苗栗県農業処は10日午後、職員を飛牛牧場に派遣し、牧場内のトウモロコシを刈り取り、埋立処理を行った。(苗栗県農業処提供、中央社)
行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)防疫局は10日夜、臨時記者会見を開催し、台湾北西部・苗栗県通霄鎮にある飛牛牧場のトウモロコシ畑で8日に発見された虫体が、壊滅的食害をもたらすツマジロクサヨトウ(Fall armyworm、中国語では「秋行軍蟲」)の幼虫であると断定されたと発表した。中国大陸では現在、ツマジロクサヨトウの被害が各省に拡大している。台湾への侵入が明らかになったのはこれが初めて。
 
農業委員会によると、見つかったのはツマジロクサヨトウの幼虫。中国大陸から季節風に乗って運ばれてきたものであり、この段階で駆除する必要がある。万が一、成虫となった場合、その脅威は鳥インフルエンザを上回る。今後2~3週間が防除のカギを握る大事な時期となる。
 
ツマジロクサヨトウはイネ科の作物の生産量を2~3割減らす恐れがある。小麦、トウモロコシ、コーリャン、コメなどを含めると、台湾の農地の約45%に影響を及ぼす可能性がある。このため農業委員会ではすでに空港や港湾などに性フェロモンを利用した誘引観測装置を設置している。ツマジロクサヨトウの存在が確認された作物は直ちに取り除いて埋立処分し、処分の対象となった場合は国が費用を補てんするという。
 
今回発見されたのは成虫ではなく幼虫で、しかも第1世代のもの。このため農業委員会では、このタイミングは非常に重要であり、急速に防除処理を行う必要があると指摘している。万が一、これが成虫になった場合、鳥インフルエンザのまん延よりも深刻な被害が生じると懸念されるからだ。
 
成虫は100㎞ほど飛翔することができる。気流によっては飛翔距離が200㎞以上に達する場合もある。また、一生に2,000個の卵を産むことができる。受精卵から成長し、次の世代の卵を産むまでの一世代は、わずか30日ほどで完了する。
 
農業委員会によると、台湾でこのほど発見された幼虫はウシの飼料として栽培されているトウモロコシを食べており、中国大陸から「飛来」してきたものと断定された。もし、ベトナムから「飛来」したものだとすると、水稲を好む傾向があるからだ。また、台湾に到達したのは10~20日前と推測される。このため、今後2~3週以内に駆除を徹底しなければ、幼虫が成虫となり産卵してしまう可能性がある。台湾で産卵して数量が増えると、農作物は壊滅的な被害を受ける。生産量の減少は2~3割では済まない可能性もある。
 
ツマジロクサヨトウはもともと中南米の熱帯及び亜熱帯地域を原産とする。2016年に中南米からアフリカに拡大し、2017年には再びアフリカ大陸からアジアに拡大した。現在、バングラデシュ、ミャンマー、インド、スリランカ、タイ、イエメン、インドネシア、それに今年被害の拡大が報告されている中国大陸で農作物に深刻な影響を与えている。
 
台湾は2004年、ツマジロクサヨトウを検疫有害動植物に指定した。台湾では現在、食用と飼料用のトウモロコシが栽培されており、その作付面積は合計3万ヘクタールに及ぶ。農業委員会ではすでに、これらトウモロコシ畑での監視を強化している。
 
また、農業委員会防検局の馮海東局長は11日、離島の金門を訪れて視察を行った。金門では特産のコーリャン酒を造るため、2,000ヘクタール余りの農地でコーリャン(高梁)を、1,000ヘクタール余りの農地で小麦を生産している。馮海東局長の視察は、ツマジロクサヨトウの幼虫の有無と、害虫予防措置が徹底されているかどうかを確認するのが目的。同時に、人的往来によって害虫が台湾本島に持ち込まれることも防ぐ。
 
現在、空港や港湾を中心として台湾全土500ヶ所に性フェロモンを利用した誘引観測装置を設置している。金門にはそのうち約20か所が集中している。これは、中国大陸から最も近い場所にあり、対策を強化しなければならないため。金門で栽培されている農作物はツマジロクサヨトウが好んで食べるトウモロコシではないが、エサとなるトウモロコシがない場合、ツマジロクサヨトウはコーリャンや小麦など、その他のイネ科の作物を食べる可能性がある。
 
農業委員会防検局の資料によると、ツマジロクサヨトウはチョウ目ヤガ科ヨトウ亜科に属し、幼虫の頭部に転倒した「Y」の字が、背部には4つの斑点があるのが特徴だという。

 

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