2024/05/04

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84歳の「文壇の開拓者」尉天驄氏の短編集が初期作品加えて再版に

2019/06/17
84歳で「文壇の開拓者」と呼ばれる作家・文芸評論家の尉天驄さんが1970年に発表した『到梵林墩去的人』が、このほど尉さんの初期の短編も加えた上で再版された。写真は15日に台湾北部・台北市内で行われ、大勢の人が駆けつけた発表会の模様。中央で車椅子に座っているのが尉天驄さん。後列左から2人目が黄春明氏、3人目は陳芳明氏。(中央社)
現在84歳の「文壇の開拓者」、尉天驄さんが1970年に発表した『到梵林墩去的人』が尉さんの初期の短編も加えた上で再版された。発表会には黄春明氏、奚淞氏、季季氏、国立政治大学(台湾北部・台北市)台湾文学研究所の陳芳明講座教授(Chair Professor)、詩人の向陽氏ら著名な作家や研究者が出席した。
 
『到梵林墩去的人』は1970年に初めて出版された。収録されていたのは8作品だったが、今回はそれに新たに5作品を追加して13作の短編小説集となっている。『到梵林墩去的人』は現代主義的な色彩を持ち、実験性に満ちていたほか象徴的な作品でもあった。その文章はシンプルかつ寂しげで、サミュエル・ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』の不条理性に通じるところがある。
 
作家の黄春明氏は、文壇と自分の人生において尉天驄さんは恩人であり支援者でもあったと指摘、尉さんがいなければ自分は今どこにいるかもわからないと感謝した。画家で作家でもある奚淞氏は、自らの文学的素養はいずれも尉天驄さんによって生み出されたものであり、尉天驄さんの姿から学んだものだとし、「出版社からこの本の序文を書くよう依頼された時にはひどく恐縮した。それで改めて元の作品を読み返した」と説明した。
 
陳芳明氏はかつて国立政治大学で尉天驄さんから学んでおり、「心から尊敬している」とした上で、尉天驄さんの時代の作家は台湾文学が荒涼としていた時期を経験していると指摘、「この時代の作家たちは非常に優れており、作品はいずれも名作だ。時代を経てもその文学的価値が色あせることは無く、世代を選ばず読むことが出来る」と称えた。
 
作家で文芸評論家でもある尉天驄さんは1935年に中国大陸の江蘇省碭山で生まれた。1949年に台湾に渡り、国立政治大学中国語学科で教授を務めた。1950年代から1980年代にかけては文学に関する雑誌の創刊や編集にも注力。台湾の文壇における重要な「開拓者」であると同時に「伝道師」でもあった。尉さんの学生の多くが現在、台湾における文壇の大黒柱として活躍している。
 
 

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