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仏ケ・ブランリ美術館、台湾の葬儀用品「紙紮」の特別展開催

2019/06/19
仏パリにあるケ・ブランリ美術館で18日(現地時間)より、台湾の葬儀用品「紙紮(紙細工)」の特別展『Palace Paradis』の開催が始まった。「紙紮」とは、死者があの世へ行っても困らないよう、住宅や自動車などの生活用品を紙細工によって再現したもので、最終的には燃やすことによってあの世へ届ける。(文化部)
仏パリにあるケ・ブランリ美術館で18日(現地時間)より、台湾の葬儀用品「紙紮(紙細工)」の特別展『Palace Paradis』の開催が始まった。ケ・ブランリ美術館と、中華民国文化部(日本の文部科学省に類似)の在仏出先機関である台湾文化センターが共同企画し、高雄市立美術館(台湾南部・高雄市)が委託を受けて実施するもの。現地時間17日にはオープニングレセプションが行われた。
 
ケ・ブランリ美術館は、アジア、アフリカ、南北アメリカ、オセアニアの固有の文明・文化・芸術を扱っている。台湾をテーマにした重要な特別展を開催するのはこれが初めて。
 
「紙紮(紙細工)」とは、台湾の葬儀文化に欠かせないアイテムだ。死者があの世へ行っても困らないよう、住宅や自動車などの生活用品を紙細工によって再現したもので、最終的には燃やしてあの世へ届ける。
 
特別展は3つのエリアに分かれており、いずれも「紙紮」の専門業者である新興糊紙店(新北市新荘区)とskea(新北市林口区)の作品が展示されている。最初のエリアは「霊厝」と呼ばれるあの世の住宅、家庭用品、食べ物などの紙細工で、台湾の伝統的な葬儀に欠かせないアイテムが中心となっている。2つ目のエリアは「ショッピング天国」であり、革製品、携帯電話端末、飛行機、ヨットなどの嗜好品やハイテクグッズなど、時代のニーズに呼応したアイテムとなっている。3つ目のエリアは台湾の葬儀文化の紹介が中心で、中元節(旧暦7月15日、先祖供養の日)の意義についても説明している。
 
台湾の「紙紮」は2016年にもパリの「装飾美術館(Musee des Arts Decoratifs)」で展示されたことがある。キュレーターであるPatricio Sarmiento氏が台湾を訪れた際、たまたま地方の路上で精巧に作られた紙細工を焼いている人々を目にし、台湾の「紙紮」という文化を知ったのがきっかけだった。フランスには似たような習慣がないことから、このときの展示は多くの人々の好奇心をかき立て、大きな反響を呼んだ。
 
当時、「装飾美術館(Musee des Arts Decoratifs)」に作品を展示したのが新興糊紙店の職人、張徐沛さん(現在69歳)だった。「この文化をフランスの人々に楽しんでもらえることはとても嬉しい」と話す張徐沛さんは今回、展示会場の入口近くに「漢式小二拆霊厝」と呼ばれるあの世の住宅を設置している。実際の5分の1のサイズだが、決して小さいものではない。ぱっと見ただけでも、屋上の装飾や花の彫刻などをはっきりと確認することが出来る。2~3人がかりで1か月余りの時間をかけて完成させた。また、住宅の上方には紙細工のヘリコプターを吊り下げた。これはケ・ブランリ美術館からのリクエストに応えたものだという。
 
もう一つの「紙紮」の専門業者であるskeaは2007年創業の新しい業者だ。現代的なものや、ラグジュアリーなものを専門に作っている。デザイナーの一人である小皮さんは1981年生まれと若い。もともとイギリス文学を学んでいた小皮さんは、外祖父が亡くなったとき、残された孫たちの気持ちを「紙紮」に託したいと考えた。しかし、市販の「紙紮」はどれもありきたりで、自分たちの理想とするものではなかった。そこで姉と一緒に、自分たちで「紙紮」を作ることにした。友人の助けを借り、材料を買ってきて、外祖父に相応しいあの世の住宅を完成させた。そのとき小皮さんは、「ようやく自分がやりたいことを見つけたような気がした」のだという。外祖父が亡くなって以来、悲しみに暮れていた外祖母がようやく笑顔を見せたことも、小皮さんがskeaの立ち上げを決意するきっかけとなった。
 
skeaが目指すのは、人々が天国でどんな生活を送りたいかを想像しながらデザインすることだ。例えばコンピュータやスマホが好きな人であれば、毎年のように最新の機種を欲しがるかもしれない。だからskeaが作る商品は、単なる葬儀用品にとどまらない。友人や家族が亡くなったあとも、その誕生日や命日にプレゼントを贈り、もう遅すぎると知りながら、彼らが生きていたときと同じように何らかの気持ちを伝えたいと思う人もいるだろう。こうした行為は残された人々にとって一種の癒しであり、慰めになるからだ。
 
ケ・ブランリ美術館の特別展『Palace Paradis』は6月18日から10月27日まで開催されている。
 

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