2024/05/08

Taiwan Today

政治

フォルモサット7号、台湾航空宇宙産業の夢を乗せて宇宙へ

2019/06/24
気象衛星「フォルモサット7号」が台北時間6月25日に打ち上げられる。「フォルモサット7号」は6つの衛星からなる気象衛星群。写真はその研究チーム。(国家太空中心提供、中央社)
科技部(日本の省レベル)に属する財団法人国家実験研究院国家太空中心(NSPO=国家宇宙センター)の気象衛星「フォルモサット7号」(FORMOSAT-7、中国語の名称は福爾摩沙衛星七号、略称は福衛7号)が台北時間6月25日に打ち上げられる。「フォルモサット7号」は、台湾と米国にとって最大規模の二国間科学技術協力プロジェクトに基づいて開発された人工衛星となる。
 
この計画の責任者である朱崇恵女史によると、「フォルモサット7号」は計画当初から、その本体の製造を担当したイギリスの民間企業SSTL(サリー・サテライト・テクノロジー・リミテッド)に対し、台湾で生産された部品を多く採用するよう要求していた。その結果、試験設備については軍用機・民間航空機の開発・製造を手掛ける台湾の漢翔航空工業が協力している。また、アンテナについては台湾の芳興科技(PYRAS TECHNOLOGY INC.)の製品が採用された。
 
芳興科技の前身である勝利微波(Victory Microwave Corporation)は1995年から人工衛星「フォルモサット1号」にアンテナを供給。その後、24年間にわたり台湾のあらゆる人工衛星計画に参加し、「皆勤記録」を更新し続けている。勝利微波は2016年、芳興科技に買収され、その傘下に入った。
 
芳興科技の関係者によると、同社の規模はそれほど大きくないものの、台湾の「隠れたチャンピョン」であり、韓国、シンガポール、アラブ首長国連邦など様々な国がすでに同社から人工衛星用アンテナを購入しているほか、ウクライナからも引き合いがある。
 
「フォルモサット7号」はこのほか、初めて台湾で自主開発した人工衛星管制システムを採用している。国家太空中心はこれまで人工衛星管制システムのソフトウエアを海外から購入していたが、新たなミッションに対応するためにほんの少しソフトウエアを修正するだけで、多額の特許料を海外の開発業者に支払う必要があった。「フォルモサット7号」は台湾製のシステムを採用することで、この問題をクリアすることが出来る。
 
このソフトウエアを開発したのは台湾の中鼎グループ傘下の新鼎系統公司(CTCI ASI)だ。同公司の范銘雄協理によると、「フォルモサット5号」でも台湾のチームが研究・開発した人工衛星管制ソフトウエアシステムが採用され、運用に成功しているが、そのメインシステムは海外の制御ソフトウエアを使用している。国家太空中心は今回、台湾の航空宇宙産業のサプライチェーンを育てるため、新鼎系統公司と人工衛星管制ソフトウエアシステムを共同開発。具体的には、国家太空中心が人工衛星管制に関する実際の経験を提供し、新鼎系統公司がこれをシステムとしてプログラミングした。
 
新鼎系統公司によると、長年積み重ねてきた人工衛星の操作技術と経験をもとに開発したこの純国産人工衛星管制ソフトウエアシステムは、主に地上局での人工衛星の操作システムとスケジューリングシステムを担当するもの。海外産のシステムに対する依存を減らし、且つ台湾のソフトウエア開発と人工衛星管制分野の技術と能力を高める狙いがある。
 
また、海外のソフトウエア開発業者からの技術移転ではなく、「ユーザー」から提供された操作経験をもとに、新鼎系統公司が管制システムのプログラミングを手掛けた。このため双方は開発過程において何度も模索や摺合せを繰り返した。今回「フォルモサット7号」の打ち上げが成功すれば、メインシステムまでも台湾が自主開発したソフトウエアを使用した人工衛星が誕生することになる。つまり、台湾の人工衛星制御ソフトウエアが人工衛星産業への進出に成功することを意味する。
 
なお、国家太空中心の主導の下、台湾では産官学連携組織「台湾太空産業発展協会(Taiwan Space Industry Development Association)」が発足している。これは、産官学の関係者が協力して、台湾の政府が進める第三期「太空科技長程発展計画(=航空宇宙計画)」を支えるというもの。芳興科技の李袗華総経理によると、台湾の製品は良質でコストが低い。このため、「台湾太空産業発展協会」を立ち上げて見本市に出展しては、台湾が部品の製造だけでなく、組立てやテスト、ひいてはシステム全体のソリューションの提供までできることを他国にアピールしている。芳興科技も現在、地上局に関するすべての企画と建設を請け負うことができるまでになっている。
 
行政院(=内閣)の第三期「太空科技長程発展計画」は2019年から2028年までの10カ年計画。251億台湾元(約883億日本円)を投入し、産官学のエネルギーを結集し、人工衛星10機を自主開発し、航空宇宙産業における台湾のナショナルチームを作り上げることを目指す。
 

ランキング

新着