2024/05/05

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公共テレビの歴史ドラマ『傀儡花』、台湾先住民女性と米国領事のロマンス描く

2019/07/10
公共電視文化事業基金会(公共テレビ)は歴史テレビドラマ『傀儡花(Lady the Butterfly)』の主要キャスト6名を一挙に発表した。1867年に発生した「ローバー事件」を背景に、台湾先住民族の娘と米国領事のラブロマンスを描く。写真は主演の蝶妹を演じる温貞菱さん。(公共テレビ提供、中央社)
テレビドラマ『一把青(A Touch of Green)』(2016)で電視金鐘奨(ゴールデン・ベル・アワード)を受賞した曹瑞原監督が、3年半ぶりに公共電視文化事業基金会(公共テレビ)のテレビドラマを制作する。タイトルは『傀儡花(Lady the Butterfly)』で、現役の医師として活躍する小説家、陳耀昌氏の同名小説を原作としたもの。
 
物語の舞台となるのは1867年の台湾。米国商船「ローバー号(Rover)」が、台湾最南端の恒春半島の沖合で難破する。海岸に流れ着いた乗組員たちは、台湾先住民が暮らす領地に誤って入り込む。そして、侵入者だと誤解した先住民族たちの首狩りに遭って殺害される。俗に言う「ローバー号事件」である。当時、アモイの米国領事であったチャールズ・ルジャンドル(Charles Le Gendre、中国語名は李仙得)は調査のため台湾へ向かう。ルジャンドルはその後、南台湾に軍隊を派遣し、地元の先住民族集落「琅十八社」の大股頭(=酋長)であるTou-ke-tok(中国語は卓杞篤)と平和条約「南岬之盟」を結んだ。米国にとっては南北戦争後初の海外出兵であり、「南岬之盟」は台湾と外国が結んだ初めての条約である。ドラマは、この事件を通して先住民族の娘である蝶妹とルジャンドルのラブロマンスを描く。
 
曹瑞原監督によると、フォルモサ(台湾の美称)が「娑婆之洋、美麗之島」と呼ばれていた時代をこの目で見てみたいと思ったのが、ドラマ『傀儡花』を撮影しようと思ったきっかけだったという。「あの時代の台湾は、荒れ果てた島だった。だから我々は、いまある幸せに感謝し、大切にするべきだ。なぜなら、台湾が現在に至るまでの道のりは容易ではなかったからだ」と語る。
 
ドラマで主役の蝶妹を演じるのは女優の温貞菱さんだ。客家人(ハッカ。台湾第二のエスニックグループ)と先住民族の混血で、さまざまな言語に精通しているという役柄で、「ローバー号事件」の調査で台湾を訪れた米国領事のルジャンドルと出会い、曖昧な恋心を抱く。
 
フランスの血統を持つアモイの米国領事ルジャンドルは、フランス出身で台湾の芸能界で活躍するファビオ・グランジョン(Fabio Grangeon、中国語は法比欧)さんを起用した。ファビオさんは「この物語は非常に素晴らしく、とても意義があるものだ。このドラマの製作は、大きな挑戦だ。あの時代の背景をよく理解することは、自分にとって大きな課題であり、より役になりきるために、歴史の本を買って読んでいる」と話している。
 
「ローバー号事件」の発端を作った先住民族集落「龜仔甪」の首領、巴耶林を演じるのは台湾伝統芸能のパフォーマンスを行う「九天民俗技芸団」のメンバー、余竺儒さんだ。このほか、パイワン族出身のCamake Valaule(中国語は査馬克・法拉屋楽)さんがパンワン族の集落「琅十八社(Seqalu)」の大股頭(=酋長)、Tou-ke-tok(中国語は卓杞篤)を演じる。Camake Valauleさんは、パイワン族の子どもたちが通う泰武国小(=小学校。屏東県泰武郷泰武村)の「泰武古謡伝唱隊」の歌唱指導者として知られている。二股頭(=副酋長)を演じるMassuke Szuke(雷斌・金碌児)さんはパイワン族の伝統陶芸の伝承に取り組む工芸家だ。いずれも曹瑞原監督が出演を自ら頼み込んだ。
 
ドラマはパイワン族の強靭な精神と台湾南部・屏東県の美しい風景を描く。ロケは屏東県の墾丁国家公園の周辺水域や農業委員会林務局(日本の林野庁に相当)が管理する山中で行い、フォルモサの豊かで美しい情景を盛り込んだものになる。撮影には100名ほどのエキストラが必要となる予定で、曹瑞原監督はエキストラについて、「自信に満ち、狩人精神を持った先住民族や漢民族で、苦しい生活を送っていた当時の先住民族の生活を再現できる人を探している」と述べている。

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