2024/05/19

Taiwan Today

政治

台湾大学ら研究グループ、低コストの新触媒開発で温暖化に歯止めを

2019/07/16
台湾大学化学部の陳浩銘准教授(右から2人目)の研究グループとスイス連邦工科大学ローザンヌ校の胡喜楽教授の研究グループが共同で開発した低コスト・高効率のCO2還元触媒は、地球温暖化対策の温室効果ガス排出削減への効果も期待が持たれる。(中央社)
二酸化炭素(CO2)を一酸化炭素に還元することは、温室効果ガス排出削減の効果があることから地球温暖化対策の一つの技術とされている。国立台湾大学化学部の陳浩銘准教授の研究グループとスイス連邦工科大学ローザンヌ校の胡喜楽教授率いる研究グループが3年の研究協力を経て、このほど二酸化炭素を効率よく変換する新たな触媒を発表した。
 
陳浩銘准教授によると、「現在、二酸化炭素還元に関する研究の大部分は、金、銀、銅の金属を還元剤といて用いる。そのためコストが高くつくという問題がある。銅は比較的コストが低いが、変換された炭化水素は、さらに分離操作が必要となり効率が悪い。また、金、銀、銅のいずれも高い電圧による還元が必要なため、還元コストが高くつく」という。
 
陳浩銘准教授らが発表した新たなCO2還元触媒は、鉄錯体から成るもので、銅に代わって、低い電圧での還元が可能で、エネルギー消費を抑え、高効率での還元が可能だ。この研究成果は、6月14日に世界的に権威のある米学術雑誌「サイエンス」に掲載された。
 
CO2還元に関する研究が始まってから20年余りがたつが、高いエネルギー消費量と低い変換効率の問題が最難関とされてきた。そのため商品化できる価値が見いだせなかったのが現状だ。陳浩銘准教授らの研究グループが数年間の研究を経て、新たなCO2還元触媒を発見したことは、現在の苦境を脱するチャンスになるとの期待が持たれる。
 
陳浩銘准教授によるとこの研究では、新たなCO2還元触媒を用いて従来のプロセスで還元した場合、わずか0.2~0.4ボルトの低電圧での還元が可能で、その還元率は90%に達する。還元された生成物は90%が一酸化炭素、10%水素というもの。このような結果から商品化も計画できるとみられる。
 
この研究はまた、台湾の科学実験施設、国家同歩輻射研究センターが傘下に持つ放射光施設「台湾光子源(Taiwan Photon Source)」と日本の大型放射光施設、スプリングエイト(SPring-8)における台湾ビームラインで、X線吸収分光法技術に利用された。約3年に渡るCO2を一酸化炭素に還元するプロセスを観察し、画期的な成果をもたらしたといえる。
 
2015年に第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP)で採択された「パリ協定」では、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするよう呼びかけている。英国では6月、「温室効果ガスの純排出ゼロ」という目標が法制化された。中華民国(台湾)政府もグリーンエネルギー政策の推進に力を注いでいる。

ランキング

新着