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台北栄民総医院、毛髪再生のカギは毛髪を抜くこと

2019/07/19
台北栄民総医院は17日、記者会見を開催し、オープンアクセスの学術ジャーナル『ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)』で発表した研究成果について説明した。写真は同医院皮膚診断科の陳志強主任。(自由時報)
台湾北部・台北市の台北栄民総医院(=病院)はこのほど、毛髪を抜いてその再生を刺激するだけでなく、皮膚を伸ばすことでも休止期に入った毛髪を再び成長期に入らせることができるが、その鍵を握るのがマクロファージの機能的亜群の1つ「M2マクロファージ」であるとする研究論文を、オープンアクセスの学術ジャーナル『ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)』で発表した。
 
台北栄民総医院は17日、記者会見を開催し、この研究成果について説明した。研究に参加した同医院皮膚診断科の陳志強主任によると、同医院皮膚部の研究チームは2015年に行った研究で、一定密度の毛髪を抜けば、全体的に毛髪の再生を促す効果があることを発見した。
 
毛髪を抜くことが毛髪の再生につながる理由は、主に組織の破壊を受けて、白血球の一種であるマクロファージが働き、細胞の救急車のように出現して幹細胞を刺激し、組織を再生させようとするため。ラットによる実験では、一定密度の体毛を抜いた刺激によってクオラムセンシング(集団感知)が誘発され、5倍以上の体毛再生効果が得られることが分かった。
 
この研究結果が発表されると、同医院の医師には、多くの患者から毛髪を抜いてくれという要求が相次いだという。しかし、陳志強主任によると、この方法はラットには有効だが、人類にはまだ適用できない。それは、ラットのヘアサイクルが約2週間で、そのほとんどが休止期にあるため。休止期にラットの体毛をすべて剃るか、あるいは抜いてしまうと、ラットは少なくとも2週間体毛が生えてこない状態となるが、その後、ヘアサイクルが成長期に入り、再び体毛が生えてくる。一方、人間のヘアサイクルは成長期が全体の85~90%を占めるため、これを無理に引き抜こうとすると、かえって幹細胞を傷つけてしまい、逆にその部分だけ毛髪が二度と生えてこなくなる恐れがある。
 
そこで台北栄民総医院は過去の研究からインスピレーションを得て、毛を抜かずに、毛の再生を促す方法を探すことにした。すると、皮膚をひっぱることでも、皮膚を刺激して、毛を抜くのと同じ効果が得られることを発見した。
 
研究チームは、ヘアサイクルが休止期にあるラットの毛を剃り、特殊な装置でラットの皮膚をひっぱった。すると、本来なら少なくとも1か月後にならないと再び生えてこなかった体毛が、14日以内に再生を始めることが判明した。研究チームがさらに研究を進めると、ラットの皮膚をひっぱっているとき、体毛の再生を促す因子と、それを抑制する因子がいずれも急速に増加していることが分かった。しかし、皮膚をひっぱる力を緩めたとたん、抑制因子が減りはじめ、体毛が成長期を迎えることを突き止めた。この研究ではまた、体毛の成長を促すカギとなるのが「M2マクロファージ」であることも分かった。
 
この研究の成果はすでに学術ジャーナル『ネイチャー・コミュニケーションズ』に掲載されている。今後はマクロファージを使った薄毛の細胞療法や、関連の薬剤の開発、またはレーザー治療によって幹細胞を刺激し、毛髪の成長因子を分泌させるといった研究に発展させたい考え。但し、人体への応用についてはまだ研究が待たれるとのこと。
 

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