2024/04/29

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台北医学大学の国際服務団、カンボジアの子どもたちに清潔な水の大切さ伝える

2019/08/19
台北医学大学の「飛洋国際服務団」がカンボジアのシェムリアップ州とバタンバン州の辺境と教育施設を訪問し、医療と衛生、教育面での指導といじめ防止の奉仕活動を行った。写真は衛生知識を現地の子どもたちに教える授業。(中央社)
台北医学大学(台湾北部・台北市)の教師と学生総勢14名からなる「飛洋国際服務団」(TMU FLYoung International Service)がさきごろカンボジアのシェムリアップ州とバタンバン州の辺境と教育施設を訪問し、医療と衛生、教育面での奉仕活動を行った。同大学がカンボジアを訪問するのは10度目。辺境での清潔な水の確保に協力すると共に、現地の人々に清潔な水の重要性を理解させていくことを長期的な目標に据えている。
 
現地での飲料水問題解決に向けて同チームはカンボジアのDontri小学校をモデル校と位置づけ、実践大学(台湾北部・台北市など)建築デザイン学科の教師と学生によるボランティアチームと共同で、同校が健康センター、並びに濾過システムのついた貯水タンクを設置するのに協力した。何層にもわたる濾過を経て、貯水タンクからの水は直接飲めるまでになった。
 
そして今年7月にはDontri小学校から30分ほど離れたPoupir小学校に図書室と健康センターを兼ねた木造校舎を新設。建設の規模はより大きくなった。手洗い台は水桶と木の棒で出来ているシンプルなものだが環境保護意識が上手に反映されており、手を洗った水が回収されて水洗トイレに利用されるなど、グリーン建築の概念も取り入れられた。
 
Dontri小学校のMoeurn Veasna校長によると、これまで子どもたちの飲む水は雨水からとっており清潔ではなく、お腹を壊す子どもが多かった。しかし貯水タンクが出来、蛇口をひねるだけで清潔な水を飲めるようになったことで、子どもたちの体は明らかに丈夫になり、下痢の発生率も大きく低下したのだという。
 
カンボジアの郷・鎮(県轄の市などに相当)には衛生センターがあり、診察も受けられる。家庭が「貧困」の条件を満たしていれば受診は無料となる。しかし、辺境で暮らす人たちの住まいから衛生センターまでは往々にしてかなりの距離がある。さらにカンボジアではしばしば大雨で交通が寸断される。村人たちにとっては外出さえもが難題で、病気になっても症状が深刻になるまで医者にかからないケースがあるという。
 
台北医学大学の「飛洋国際服務団」は8月、カンボジアの辺境で2週間にわたる衛生指導を行った。彼らの主な任務は知識の伝授であり、物資の提供ではない。現地の人たちが正しい観念を育み、清潔な水を飲むこと及び衛生的な環境の大切さを知ってくれるよう導くのである。「飛洋国際服務団」のチームは協力対象の小学校に医療キットを支給すると共に、「救命・応急手当の手引き」を寄贈した。この手引きでは、多く見られる4つの病気(嘔吐・下痢・熱中症・風邪)を取り上げて各疾病の症状を詳しく解説すると共に、WHO(世界保健機関)の手引きを参考にして村人が自分たちで出来る解決方法を説明している。例えば子どもが下痢を起こした場合、保護者は誰の家にでもある砂糖と食塩でORS(経口補水液)が作れること。また、下痢の場合に注意すべき飲食制限なども紹介している。そしてさらに重要なことは、子どもの具合が悪くなったならば、取り返しのつかない事態を避けるため、すぐに医者に見せるべきであることを明確に伝えていることだという。
 
バタンバン州で教育に携わる幹部職員は「飛洋国際服務団」の優れた取り組みを見て、今年は現地の小学校71校の校長を召集、各学校が成功経験を「コピー」し、共に学校内の飲料水、並びに生徒たちの栄養状態と医療の状況を改善できるよう希望した。
 
一方、台北医学大学の「飛洋国際服務団」はいじめ問題の解決にも取り組んでいる。同チームは今年シェムリアップ州に、ある絵本を持ち込んだ。メンバーが原案を出し、台北医学大学のサークル「美的杏画社」が作画した絵本の『兎偵探』(ウサギ探偵)である。この絵本では、個々の違いと尊重を学び、学校内でのいじめを減らすことが試みられている。『兎偵探』では、男子の服を着るのが好きな牝牛がお化粧をしているところをウサギ探偵に発見される。普段、男の子の服を着ていることを笑われた牝牛が、仕方なく一般の見方に合わせていたのだ。
 
「飛洋国際服務団」のメンバー、鄭閔中さんによれば、調査の結果、カンボジアでは約1/3の子どもたちが学校でいじめられたり、笑われたりして中途退学するという。カンボジアの教科書は形式ばっていて伝統的な教義にあふれている一方で、物語やイラストで伝える部分がほとんど無い。このため鄭さんたちは絵本で子どもたちの興味をひこうと考えた。また、絵で伝えることは子どもたちにより多くの刺激を与えるのではと期待している。
 
絵本は子どもたちにメッセージを伝える最も有効な方式の一つ。また、カンボジアには読み物が少なく、こうした絵本は貴重な読み物になることで子どもたちはみな気に入っている。これまでに提供した絵本はみなボロボロになるまで読まれており、現地の先生まで好んで読んでいるのだという。
 
カンボジア政府の報告では、同国では5人に1人の女性が暴力に苦しんでいる。特に貧困地区でその割合が高い。また、辺境の小学校で特定の子どもが集団でのいじめを受ける現象も見つかっている。「飛洋国際服務団」では、大人も子どもも読め、教育程度によるハードルも無い絵本がいじめの減少を緩和できるようにと願っている。
 
 

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