2024/05/05

Taiwan Today

政治

センザンコウの多国籍調査、台湾はセンザンコウにとって「地獄」から「極楽」へ

2019/09/26
ウロコを持つ哺乳類であるセンザンコウ(穿山甲)は密猟の増加により、絶滅が危惧されている。「The Global Environmental Reporting Collective」は、アジアやアフリカの14の報道機関、30名余りのジャーナリストの協力を得てセンザンコウの生態調査を実施。25日に「Trafficked to Extinction(密輸から絶滅へ)」と題するレポートを発表した。(「報導者」余志偉記者提供、中央社)
ウロコを持つ哺乳類であるセンザンコウ(穿山甲)は密猟の増加により、絶滅が危惧されている。現在、サイやゾウなどを上回り、哺乳類としては世界で最も多く密猟や密輸の対象となっている。2019年初めに発足した「The Global Environmental Reporting Collective」はこうした状況を鑑み、最初の調査対象にセンザンコウを選んだ。同組織は、アジアやアフリカの14の報道機関、30名余りのジャーナリストの協力を得てセンザンコウの生態調査を実施。25日に「Trafficked to Extinction(密輸から絶滅へ)」と題するレポートを発表した。
 
センザンコウの密輸摘発数は現在も増え続けている。統計によると、2019年の現時点までに世界各国の政府当局が摘発したセンザンコウの密輸頭数は11万0,182頭に達する。これは対2018年比54.5%の増加だ。しかし、「The Global Environmental Reporting Collective」の調査によると、密輸の大多数は依然摘発されていない。国際刑事警察機構(インターポール)の推計によると、野生動物の密輸のうち、摘発されているのは全体の10分の1程度にすぎない。
 
「The Global Environmental Reporting Collective」の調査には、台湾から非営利のネットメディア「報導者(The Reporter)」が参加した。25日に発表されたレポートでは、センザンコウのウロコを年間6万頭分輸出し、ウロコを漢方専門店に売って薬にしたり、高級皮革製品の材料にしたり、肉をジビエ料理店に販売するなどし、その経済利益を存分に享受してきた台湾が、いかにして1950年以降、センザンコウの保全に目覚めていったかを紹介している。
 
国際社会で絶滅危惧種の保全が叫ばれる中、台湾の内政部は1972年、野生動物の全面禁猟を決定。輸出や密猟、標本の製作などを厳しく禁じた。しかし、警察当局の目が届かない場所で、依然として密輸が行われていた。1989年には「野生動物保育法」が成立し、センザンコウの内需市場に歯止めがかけられた。しかし、その後も台湾は米国内法である「ペリー修正法」(PA法)の制裁を受けることになったため、政府は「野生動物保育法」の罰則を引き上げたほか、「野生動物保育査緝督導小組」を発足して密猟を厳しく取り締まるなどした。「ペリー修正法」による制裁は1995年に解除された。
 
また、台湾では自発的で多様な保全活動も行われた。例えば密猟取締りの第一線で働く台東県(台湾南東部)延平郷鸞山の警察官、地元住民、それにセンザンコウ専門家の裴家騏さんとその教え子である林敬勛さん、孫敬閔さんなどが、長期にわたってセンザンコウ保全の啓蒙活動、調査、研究などに取り組んできた。国立屏東科技大学(台湾南部・屏東県)、鸞山派出所、地元の農業局などが通報システムを立ち上げ、「センザンコウを発見したら派出所か農業局に通報すること」を地元住民に周知させた。
 
こうした約50年に及ぶ努力の結果、台湾はセンザンコウにとっての「地獄」から「極楽」へと変化を遂げ、世界の「模範生」となった。現在、台東県延平郷鸞山には100ヘクタール当たり平均12.8頭のセンザンコウが生息していると言われている。これは、野生の生息個体数としては世界最高の密度である可能性がある。また、こうした取り組みは、日本のNHK(日本放送協会)やアメリカのディスカバリーチャンネルなどでも報道されている。
 
「報導者」はこのほか、台北市立動物園(台湾北部・台北市文山区)が世界に先駆け、20年前からセンザンコウの人工保育を行い、野生生活で摂取する食物に近い栄養素を組み合わせた飼料を探し出したこと、孫敬閔さんと地元の猟師である阿勇さんらが協力し、8年間にわたって野生のセンザンコウ47頭の追跡調査を行い、野生のセンザンコウによる子育て映像の撮影に世界で初めて成功したことなど、台湾におけるセンザンコウ保全の取り組みが、すでに多くの成果を挙げ、国際社会と情報共有されていることを紹介している。
 
「報導者」による詳しい報道により、台湾のこれまでの努力が、国際社会との協力によるセンザンコウ保全に、新たな活力と希望の光を与えていることが明らかになった。
 

ランキング

新着