2024/05/03

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政治

デリバリー代行業者と配送員は「雇用関係」、政府各省庁が法整備急ぐ

2019/10/17
飲食デリバリー代行サービス業の配送員が相次ぎ交通事故で死亡したことから、配送員の労災保険に関心が寄せられている。労働部は14日、飲食デリバリー代行サービスを提供するfoodpandaとUber Eatsの2社について、これらの業者と配送員との関係は「雇用関係」にあると認定した。(聯合報)
10月上旬の双十国慶節(10月10日。中華民国の建国記念日に相当)を含む4連休中、飲食デリバリー代行サービス業の配送員2名が交通事故で命を落とすというニュースが伝えられた。台湾ではこれがきっかけに、配送員の労災保険の有無に関心が寄せられている。労働部(日本の厚生労働省に類似)は14日、飲食デリバリー代行サービスを提供するfoodpandaとUber Eatsの2社について調査を行い、これらの業者と配送員との関係は「雇用関係」にあると認定した。
 
立法院(=国会)社会福利及衛生環境委員会では14日、「中高齢者及高齢者就業促進法(=中高齢者及び高齢者の就業促進法)」の草案審議が行われた。審議では立法委員(=国会議員)から、飲食デリバリー代行サービスは新形態のシェアリング・エコノミー(共有経済)であることから、業者と配送員は雇用関係にあるのではないかと質問があった。これに対して労働部の許銘春部長(=大臣)は、「台湾におけるデリバリー代行サービスの配送員は8万人、デリバリー代行サービスのプラットフォームは7つある。現行の法律は、配送員とこうしたプラットフォームの関係に完全に当てはめることはできないが、判断基準となるものはある。政府としては、『個人事業主への業務委託』の体裁を取った『雇用関係』を容認するわけにはいかない」と指摘。労働部はすでに複数の配送員と個別面談を行い、配送員に労働者組織がないことを把握しており、今後は配送員が労働者組織を立ち上げ、自身の権益を保護することができるよう協力していく考えであることを明らかにした。
 
また、別の立法委員からは、配送員と業者の関係が雇用関係にあると認定されたが、業者が労災保険に加入しない場合、労働部としてどう対応するかと質問があった。これに対して許部長は、「労働部は業務の委託者に対し、配送員のために商業保険に加入するよう要求する。これは、配送の際のリスクに対し、一定の保障とするためだ」としながらも、配送員についての課題は多岐に及ぶため、金融監督管理委員会や関連省庁と商業保険の種類の増加や、営業用オートバイなどの問題について議論する必要があると説明した。
 
労働部は14日、飲食デリバリー代行サービスを提供するfoodpandaとUber Eatsの2社について、配送員との関係は「雇用関係」にあると認定した。労働部はすでに、こうした飲食デリバリー代行サービス業者に関する法整備を加速させており、より分かりやすい方法で国民に業務の性質を理解してもらうことを目指している。これにより、配送員を「個人事業主」と見なしながら、実際には「雇用関係」を構築するような労働形態を排除する。労働部では11月末までに法整備を進め、確定後直ちに公布することにしている。
 
foodpandaとUber Eatsと配送員との関係が「雇用関係」にあると認定されたことについて台湾労工陣線の孫友聯秘書長は、「やや遅かった感がある」としながらも、「当然ながら歓迎したい。なぜなら台湾の飲食デリバリー代行サービスの問題は、今日に始まったものではないからだ」とコメント。また、「『雇用関係』であるのならば、雇用主はしかるべき法定義務から逃れることはできず、配送員に対する保障も労災保険だけでなく、労災防止のための法定義務や、労働基準法で定められている労災以外の関連義務についても改善すべきだ。ひいてはより厳しい立入調査によって、労働者の権益を十分に守る必要がある」と指摘した。
 
労働部の認定に対してfoodpandaはニュースリリースを発表し、同社と配送員との関係は、「個人事業主への業務委託」であるとの立場を強調した。Foodpandaはまた、「個人事業主への業務委託」ではあるものの、同社が配送員に提供する保障は法定の要求を上回っており、「個人事業主への業務委託」という制度を隠れ蓑にして、企業の責任を回避しているわけではないと訴えた。
 
これに対して労働部職業安全衛生署(=日本の労働基準監督署に相当)は、立入調査の結果は証拠に照らし合わせて下したもので、2社と配送員の関係は「雇用関係」にあると認定したと指摘。業者側が一方的に「個人事業主への業務委託」だと主張するのであれば、それは「個人事業主への業務委託」の体裁を取った「雇用関係」であり、規定の手続きにのっとり、行政処分を行わなければならないと説明している。また、「業者が不服を申し立てたり、行政訴訟を起こしたりするのであれば、労働部としてはいずれも尊重するが、検査機関はこれからも現在のペースで、他の飲食デリバリー代行サービス業者に対する調査を進めて行く」と述べている。
 
労働部職業安全衛生署では今後2週間にわたり、その他の飲食デリバリー代行サービス業者に対する立入検査を行い、「個人事業主への業務委託」あるいは「雇用関係」にあるのかを調査する。また、検査後の初歩的な認定については、いずれも押収した証拠資料と状況に基づき分析することになるという。
 
なお、国民健康保険に関する業務を担当する衛生福利部中央健康保険署は、foodpandaとUber Eatsと配送員の関係が「雇用関係」と認定されたことを受け、「業者は配送員のために健康保険に加入する必要がある」と指摘した。
 
中央健康保険署によると、配送員が本職を持ち、兼業として配送の仕事をしている場合、本職の会社が健康保険に加入しているだけで良く、飲食デリバリー代行サービス業者が重複して健康保険に加入する必要はない。しかし、配送員が本職として配送の仕事をしている場合、業者はこの配送員のために健康保険に加入しなければならない。
 
中央健康保険署は、「労働部が『雇用関係』を持ち、且つ本職として配送の仕事をしていると認めた業者について、中央健康保険署は関連の調査を行い、全民健康保険法第84条に基づき、業者に対して規定の2~4倍の保険料の追徴を要求するほか、配送員の過去3か月の平均収入に基づいて、労働保険の月間負担額の根拠とする」と説明している。
 

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