2024/05/03

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精細な彫刻に打ち込んで60年、彫刻家の葉経義さんに「国家工芸成就奨」

2019/11/11
「国家工芸成就奨」は生涯を通じて工芸の道に精進した技術者を表彰する賞。13回目となった今年は、このほど火災に遭った首里城にも関わった彫刻家の葉経義さん(右の写真)が受賞した。写真左は葉経義さんの作品「迎向朝陽」。(文化部と中央社より)
文化部(日本の省レベル)指導の下、国立台湾工芸研究発展中心が執行する「国家工芸成就奨」(国家工芸貢献賞)は、生涯を通じて工芸の道に精進した技術者を表彰することを目的としている。13回目となった今年はいずれも長いキャリアを持つ工芸技術者19名が他薦及び自薦でエントリー。審査の結果、9人の審査委員による全員一致で、今年の受賞者には彫刻家の葉経義さんが選ばれた。文化部による確定を経て鄭麗君文化部長(大臣)が9日、今年の「国家工芸成就奨」を葉経義さんに授与した。
 
台湾の伝統的な廟宇(神社仏閣)の多くに彫刻を施してきた葉経義さんは1937年に台湾南部・高雄市で生まれた。呼び名は「阿義師」(義師匠)。15歳で泉州派の名人、蘇水欽氏の門下に加わり、入門からわずか2カ月で高雄市鼓山区の哈瑪星代天宮に最初の作品を作り上げた。この作品で葉さんは「三国演義」の人物を生き生きと表現することに成功、彫刻での大きな才能を発揮して見せた。第2次世界大戦が終わって以降の伝統的な彫刻界において強い個性を持つ彫刻家である。葉経義さんが作りだす仏像、廟宇での装飾、屏風、花鳥作品はいずれも高く評価されている。また、花鳥柱、龍鳳柱、神龕(厨子)の仕上がりも見る人を驚かせる。葉経義さんは泉州派の特色を保ちながら葉さん自身のスタイルも確立。細やかさと何層にも重なり合う奥行きが特に優れているのだという。
 
葉経義さんが木彫り職人になった当初は寺や廟での彫刻が主で、葉さんは台湾における文化財や歴史的な建築物の修復工事に数多く関わった。例えば台南市(台湾南部)の五妃廟、高雄市左営区の古城、同市鳳山区の龍山寺、新北市(同北部)板橋区の林本源邸(林家花園)、台北市(同北部)西門町の紅楼戯院、台南市の王姓大宗祠などである。
 
葉さんはまた、要請に応じて日本に渡り、沖縄の首里城における「御王座」、「御差床」、「御轎椅」の復元作業に参加した。東京都八王子市の妙法寺、長野県の向源寺、神奈川県の妙安寺、四国の安楽寺などの彫刻工事にも携わった。今年10月31日、首里城は火災に見舞われて正殿は全焼、2階に置かれていた、清の康熙帝から与えられた「中山世土」という扁額の下の「御王座」も焼失した。この「御王座」は復元当時、設計から木工、彫刻までを葉経義さんが手がけたもの。
 
首里城は第2次世界大戦での空襲で全焼。1990年代に正殿の復元工事を担当した清水建設は「御王座」の復元にふさわしい職人を日本で見つけられず、専門家を通じて1991年、葉経義さんに設計と制作を依頼した。葉さんはその形に関する口述や琉球王国の尚真王(1477年~1526年)の肖像画で確認できる椅子の一部を頼りに設計、優れた木工と彫刻の技術で復元作業を進めた。そして日本の人間国宝級漆芸家である前田孝允さんが螺鈿と漆を施して、ようやくこの優雅かつ明朝様式の「御王座」が出来上がったのである。
 
葉経義さんの受賞歴は多い。2006年(69歳)で第2回大墩工芸師(彫塑類)を受賞。2007年(70歳)では第53回「南美展」彫塑部門の特賞を獲得。同年第14回「全球中華文化芸術薪伝奨(伝統工芸部門-木彫)」を受賞。2014年(77歳)には「高雄文芸奨」(高雄市)及び文化部の「重要伝統工芸-伝統木彫保存者」人間国宝に輝いた。2016年(79歳)には「巧聖仙師魯班公奨-木芸大師」(台中市)を受けている。
 
「国家工芸成就奨」の審査員長、江韶瑩氏によると、同賞の審査項目は人格、態度、技術、作品の意味とその出来、伝統工芸の伝承と普及の5つ。今回の審査は過去最短時間で審査員の意見がまとまり、全員一致で葉経義さんを選出したとのことで、まさに「実至名帰」(実力に名誉がついてくる)だった。
 
 

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