2024/05/04

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政治

仏出身の映画監督Jean-Robert Thomann氏が帰化、過去に「台仏文化奨」受賞

2019/11/12
台湾文化に関するドキュメンタリー映画を16作品手掛けてきたフランス出身の映画監督Jean-Robert Thomann(中国語名は尚若白)さんが10月下旬、中華民国国籍を取得した。過去に「台仏文化奨」(第22回)を受賞したことがある。(中央社)
フランス出身の映画監督で、これまで台湾文化に関するドキュメンタリー映画を16作品手掛けてきたJean-Robert Thomann(中国語名は尚若白)さんが10月下旬、中華民国内政部による審査を経て、「高級専業人才(=高度な専門性を持つ外国人)」の要件を満たし、中華民国(台湾)国籍を取得した。Jean-Robert Thomann氏はかつて、中華民国文化部(日本の文部科学省に類似)とフランス学士院を構成する5つのアカデミーの一つ「倫理・政治学アカデミー」が共同で設立した「台仏文化奨」(第22回)を受賞したことがある。
 
Jean-Robert Thomannさんは取材に対し、「帰化の機会があることを自発的に知らせ、申請手続きを手伝うなどしてくれた台北市萬華区公所(=区役所)の職員に感謝したい」と述べた。
 
Jean-Robert Thomannさんはかつて仏パリのテレビ局で映像編集の仕事をしていた。その後、フリーランサーとなり、1996年3月、初めて台湾へやって来た。以来、台湾との縁は23年になる。
 
フランスでは1990年代、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督、楊徳昌(エドワード・ヤン)監督、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督などが注目されるようになった。「フランス人にとって、台北は映画の街だった」と言う。当時、フランスで台湾人女性と出会い、付き合うようになったJean-Robert Thomannさんは、こうした好奇心を胸に抱き、初めてアジアへ渡り、2009年から台北に定住するようになった。
 
Jean-Robert Thomannさんはレンズを通して、歌仔戯(ゴアヒ。台湾オペラとも呼ばれる伝統影歌劇)、布袋戯(ボテヒ。台湾伝統の人形劇)、南管(中国・福建省泉州を発祥の地とする伝統音楽)、書道、先住民族の音楽など、台湾の伝統文化を次々にフランスに紹介した。最初に手掛けたのは「歌仔戯」の名優、廖瓊枝さんを追ったドキュメンタリー映画だった。現在は廖瓊枝さんの一番弟子で、「薪伝歌仔戯劇団」の団長を務める張孟逸さんのドキュメンタリーを制作中だ。
 
Jean-Robert Thomannさんは自身の作品に、2004年と2008年の台湾総統選挙の様子を取り入れた。1996年3月に台湾で初めて正副総統の直接選挙が行われた際も台湾にいたというJean-Robert Thomannさんは、「台湾には後退して欲しくない。貴重な民主主義と自由を失って欲しくない」と話す。
 
「台湾海峡両岸の問題は、選挙があるたびにクローズアップされる。そして、国や民族に対する帰属意識の矛盾は近年、伝統文化の領域でも出現するようになっている。例えば伝統音楽の『南管』や伝統楽器の『琵琶』について語るとき、これを中国の文化であって、台湾文化と言うべきではないという人も出現するようになっている。かつてはこうした区分をしていなかった」とJean-Robert Thomannさんは指摘する。
 
Jean-Robert Thomannさんはまた、「台湾社会は現在もさまざまな側面で、自分をどのように定義するかを模索している」と指摘する。しかし、フランスからやって来たJean-Robert Thomannさんにとって、まさに形成されつつある文化の中に身を置くことは非常にエキサイティングなことだという。
 
台湾社会において最も得難いものは、生活が便利で且つ安全なことだけでなく、多様で包容力のある文化だとJean-Robert Thomannさんは指摘する。例えば台北市内には新旧の建築物が共存している。あるいはちょっとお金を出して美味しい滷肉飯(ルーローファン。豚肉のそぼろご飯)を食べてから、隣のカフェで友達とおしゃべりをすることもできる。しかし、この20年間の台北の変化は速すぎる。古い家屋はどんどん立派なマンションに建て替えられている。「立派なマンションの1階でも、こうした小さい店が経営を続けていくことはできるだろうか」とJean-Robert Thomannさんは心配だという。
 
ドキュメンタリーだけでなく、2016年に台湾で初となる長編映画『我的西門小故事』を製作したJean-Robert Thomannさんは、これをきっかけに台湾映画業界への進出を果たした。現在、私立中原大学(台湾北部・桃園市)で学生たちに映画を教えているほか、国立台湾芸術大学(台湾北部・新北市板橋区)電影系研究所(=大学院)で映画製作を学び、次の作品である短編映画の製作準備に取り掛かっている。
 
変わり続ける台湾に対して、変わらず残して欲しいものは何だろうか。「台湾人の情熱、礼儀正しさ。それから台湾社会の民主主義と国際化。これらは永遠に変わらないで欲しい」―、これがJean-Robert Thomannさんの答えだ。
 
 

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