2024/04/29

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腎臓病患者に低カリウム野菜を、「経済部中小企業創新研究奨」を受賞

2019/11/15
野菜に含まれるカリウムを減らす画期的な栽培方法を発明した黄明発さん(写真)。現在は、こうした精密農業を普及させることで、都会に出た若者を農村に呼び戻すことはできないかと考えている。(黄明発さん提供、中央社)
薬剤師の黄明発さん(54歳)は野菜に含まれるカリウムを減らす画期的な栽培方法を発明し、13日、経済部(日本の経済産業省)が実施する「中小企業創新研究奨(=中小企業イノベーションアワード)」を受賞した。
 
黄さんはもともと薬剤師の資格を持ち、美容医療やコスメ関係の仕事をしていた。3年前、台湾南部・台南市で人工透析をしている義母(妻の母)を見舞った。そこで義母が食事のとき、野菜の茎と葉を細かく切り、3分以上、茹でこぼしてから食べているのを見た。これは、野菜に含まれているカリウムを減らすことで、カリウムの取りすぎが心臓障害を引き起こすのを避けるためだった。
 
小さく切って茹でこぼした葉野菜は、シャキシャキとした歯ごたえを失い、栄養も流出してしまっていた。多くの腎臓病患者はこれを嫌い、緑の野菜を食べなくなってしまうのだという。これは健康に影響を与えるだけでなく、生活の質の低下にもつながる。黄さんはその後、台湾中部・台中市にある国立中興大学植物病理学系の博士課程に入ることを決めた。植物病理学の研究を通して、腎臓病患者の食事の問題を解決したいと考えたのだ。
 
しかし、黄さんが提出した研究計画書に教授は難色を示した。野菜の栽培に使う肥料には必ず窒素、リン、カリウムなどが含まれているからだ。それでも黄さんは諦めず、低カリウムの野菜を育てるために、まず低カリウムの培養土を開発した。また、フレームを使用し、野菜にほかの土がつかないような工夫をすることで土壌汚染を避けるなどした。
 
黄さんはさらに点滴灌漑の設備を導入し、自分で調合した低カリウムの液体肥料を毎日定時に噴射した。また、粘着捕虫シートとフェロモントラップなどを駆使し、農薬の使用を避けながら、低カリウムの野菜を育てることに成功した。国立中興大学の土壌調査試験中心が行った検査で、一般の農法で栽培した野菜と比べて、黄さんの野菜はカリウムの含有量が約4割少ないことが証明された。
 
黄さんはまた、「腎食堂」と名付けたチームも結成。2017年には国立中興大学を代表し、教育部(日本の文部科学省に類似)が実施する「生技創新創業奨(=バイオイノベーション及び起業賞)」コンテストに参加し、アグリバイオ部門で銅賞と最佳人気奨(=最優秀人気賞)を獲得した。さらには科技部(日本の文部科学省に類似)が実施する「萌芽計画」にも参加して経費助成を受け、低カリウムの野菜を大量生産することにも成功した。そして今月13日には経済部が実施する「中小企業創新研究奨」を受賞した。
 
黄さんが立ち上げた研究チームは台中市新社区に持つ300坪の栽培農地で、今年5月から低カリウム野菜の量産を行っている。現在栽培している野菜には台湾小白菜、チンゲン菜、アブラナ、小松菜、レタスなどがあるという。
 
 

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