中国語映画のアカデミー賞とされる金馬奨（ゴールデンホース・アワード）の授賞式が23日夜、台北市（台湾北部）の国父紀念館で行われた。56回目を迎える今年は長編映画91作品、長編アニメーション2作品、ドキュメンタリー86作品、短編映画353作品、短編アニメーション56作品の合計588作品がエントリーし、そのうち39作品がノミネートされた。
そのうち台湾の映画監督、鍾孟宏（Chung Mong-Hong）氏の新作『陽光普照（A Sun）』は11部門でノミネートされ、23日の授賞式では最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀編集賞、観客賞の合計6部門で受賞した。
12部門でノミネートされていた『返校（Detention）』は、最優秀新人監督賞、最優秀脚色賞、最優秀オリジナル映画歌曲（主題歌）賞、最優秀美術設計賞、最優秀視覚効果賞の5部門受賞にとどまった。
金馬奨の授賞式と言えば、映画関係者が社会問題について自己の見方を壇上で発表するシーンがしばしば見られる。昨年の金馬奨では映画『我們的青春、在台湾』で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した監督の傅榆さんが、「我々の国が真に独立した一つの個体として見てもらえることを希望する。これは一人の台湾人として、私にとって最大の願いだ」と壇上で述べ、台湾海峡両岸の敏感な政治問題に触れた。今年は最優秀オリジナル映画歌曲（主題歌）賞を受賞した盧律銘さんが、混乱する香港情勢に関心を寄せる発言を行った。
なお、中国映画は今年の金馬奨をボイコットした。これは、中国の国家電影局が今年半ば、中国映画及び映画関係者に対して第56回金馬奨への参加を控えるよう文書で指示したことが原因。中国当局は今年、自国の映画賞である「金鶏奨」の授賞式を、当初予定の9月から金馬奨と同日の11月23日に変更して実施した。
金馬奨を主催した台北金馬影展（＝映画祭）執行委員会の主席で、映画監督のアン・リー（李安）氏は中国映画が今年の金馬奨をボイコットしたことについて、「大変遺憾ではあるが、金馬奨は中国語映画の大家族のようなもの。我々は永遠に両手を広げており、中国語映画であればいつでも参加を歓迎する」と述べた。
第56回金馬奨の受賞者リストは以下のとおり。
★最優秀作品賞（長編映画） 『陽光普照』
★最優秀監督賞 鍾孟宏／『陽光普照』
★最優秀新人監督賞 徐漢強／『返校』
★最優秀主演男優賞 陳以文／『陽光普照』
★最優秀主演女優賞 楊雁雁／『熱帶雨』
★最優秀助演女優賞 張詩盈／『我的霊魂是愛做的』
★最優秀助演男優賞 劉冠廷／『陽光普照』
★最優秀新人賞 范少勳／『下半場』
★最優秀脚本賞 楊修華／『幻土』
★最優秀脚色賞 徐漢強、傅凱羚、簡士耕／『返校』
★年度台湾傑出電影工作者（=台湾映画制作者賞） 湯湘竹
★最優秀ドキュメンタリー賞 『你的臉』
★最優秀オリジナル映画歌曲（主題歌）賞 光明之日／『返校』（作詞：雷光夏 作曲：盧律銘、雷光夏 歌：雷光夏）
★最優秀オリジナル映画音楽（サントラ）賞 張偉勇／『幻土』
★最優秀音響効果賞 李丹楓、周震、厳唯甄／『灼人秘密』
★最優秀編集賞 頼秀雄／『陽光普照』
★最優秀撮影賞 陳克勤、陳志軒／『狂徒』
★最優秀美術設計賞 王誌成／『返校』
★最佳造型設計賞 Nikki GOOLEY、周麗明、蔡珮玲、Nina EDWARDS／『夕霧花園』
★最優秀アクション設計賞 洪昰顥／『狂徒』
★最優秀視覚効果賞 再現影像製作有限公司、郭憲聡／『返校』
★最優秀作品賞（短編映画） 『紅棗薏米花生』
★最優秀短編アニメーション賞 『金魚』
★特別功労賞 王羽、王童
★観客賞 『陽光普照』
★国際映画批評家連盟（FIPRESCI）賞 『大餓』