2024/05/05

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映画『台湾、街かどの人形劇』の陳錫煌さん「伝統の技と芸を育てて」  

2019/12/13
伝統人形劇、布袋戯(ボテヒ)の第一人者、陳錫煌(中央)さんは、伝統の技と芸をしっかりと育てていくことによって、はじめて文化は盛り上がり、国が繁栄するとの考えを表明した。右は陳さんを追ったドキュメンタリー映画『台湾、街かどの人形劇』の楊力州監督。(中央社)

日本でも公開中のドキュメンタリー映画、『台湾、街かどの人形劇(中国語原題・紅盒子)』でスポットを浴びている伝統人形劇、布袋戯(ボテヒ)の第一人者、陳錫煌さんは、伝統の技と芸をしっかりと育てていくことによって、はじめて文化は盛り上がり、国が繁栄するとの考えを表明した。
 
シンガポールの大手新聞「聯合早報」と華族文化センターが行なった一連の文化イベントでの『台湾、街かどの人形劇』の上映に合わせ、陳さんとこの映画を手がけた楊力州監督が観客との交流の場に出席した。
 
楊監督は2006年に初めて陳さんの人形劇に出会った。台湾北部、台北市の大稲埕地域に拠点を置く台原偶戲団の演目を鑑賞し、細やかで軽やかな指の動きと技で、人形がまるで魂を吹き込まれたように生き生きするのを目の当たりにし、10年をかけてこの国宝級の人形使いである陳さんを追った。
 
楊監督によれば、テレビ布袋戯を見るため放課後慌てて家に走って帰ったのが小学生のころの心に残る思い出となっているという。一方で、突然この文化が消えてしまったいまとなっても、「何とも思わない」日常を過ごしている。ある芸術が存在するのに重要な条件は必要とされることだという事実について、伝統的な布袋戯がいつの間にか、長い間必要とされなくなっていたために徐々に消えてしまったことを映像で表現した。
 
この映画の撮影は10年続いたが、芯となるのは父と子の物語である。偉大な人形師の李天祿さんという父と、その息子である陳さんの間には、複雑で言葉では言い表せない物語が秘められている。
 
89歳の陳さんはシンガポールでの上映に合わせて、観客と間近で交流した際、布袋戯は台湾語で上演されてこそ魂が伝わり、布袋戯の真髄と布袋戯本来の「醍醐味」が表現できると語った。

台湾南部では主にテレビの影響を受け派手な効果やアクションを強調する「金光布袋戯」と呼ばれる種類のものが多いが、使われる人形は大きくて重さがあり、細やかな動作と演技を求められる伝統の布袋戯の表現には及ばず、伝統的な布袋戯はいずれ南部では消えてしまうとの懸念を語った。

一方で、若い人々が布袋戯という文化に身を投じて伝えてくれることを期待し、自身は全力でこの芸術を教えていきたいと語った。

陳さんは巡演の際に必ず赤い箱を肌身離さず持ち歩いている。前述のドキュメンタリー映画の中国語原題「紅盒子(赤い箱)」はこれにちなんだもの。中に伝統文化の演劇をつかさどる神様、田都元帥の像がおさめられている。

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