教育部(日本の文科省に類似)と文化部(日本の省レベル)は昨年12月31日に開いた記者会見で、「公共出借権」(公共貸与権)を2020年元日より試験的に実施すると発表した。これにより、2つの公共図書館は図書を1冊貸し出すごとに、作者と出版社に合計3台湾元(約11日本円)の補償金を支払うことになった。
文化部の鄭麗君部長(大臣)は同記者会見で、中華民国(台湾)は東アジアで最初に公共貸与権を実現する国であり、2020年1月1日にその歴史的な一歩を踏み出すことになると述べた。これは国が創作と出版を尊重し、それらに感謝していることの表れだという。
行政院(内閣)の蘇貞昌院長(首相)は昨年4月に公共貸与権の推進を宣言、その後、教育部と文化部の検討を経て、今年1月1日より国立公共資訊図書館と国立台湾図書館で3年間、試験的に実施することになった。前年の貸し出しデータを元に1冊貸し出すとごに合計3台湾元が支払われる(支払いは2021年に開始)。3台湾元の内訳は70%が作者、30%が出版社の分となる。
適用されるのは、本国人、あるいは台湾の法律に則って登記された法人もしくは民間団体が中華民国(台湾)の国家言語か外国語で著した作品で、台湾で出版され、ISBNコード(図書、書籍及び資料の識別のために設けられた国際規格のコードの一種)を取得している「紙の本」。翻訳作品は適用対象外。
公共貸与権の概念は北欧で生まれ、北欧ではすでに70年から80年の歴史がある。台湾では2020年にようやく試験的に始まったが、類似した制度を持つ国は世界でまだ30数カ国に過ぎず、政府は政府と社会の力で共に創作活動をサポートし、奨励していきたいとしている。
時報文化出版企業株式会社の趙政岷董事長(会長)は、試験実施期間の補償金は焼け石に水といったようなものだが、それでも作家にとっては大変良い助けになると述べ、同制度は台湾における出版の自由や創作の自由に対する重要なエネルギーになるとの見方を示した。
記者会見に招かれた絵本作家の曹俊彦さんは、図書館から貸し出される図書が多ければ多いほど出版社の経営は苦しくなるというかつてのジレンマを指摘した上で、公共貸与権の推進に遅すぎるということは無いと強調、この制度がしかれることで台湾の創作力がより強化されることに期待した。
また、エッセイストの廖玉蕙さんは自らの経験として、読者が廖さんの作品を称えた上で、「図書館で借りるね」と言うことがしばしばあったと説明、本の購入者が減りつつある中、公共貸与権の補償金は象徴として大いに有意義で、台湾には希望があるといっそう感じさせてくれると喜んだ。