2024/05/02

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台湾で最も美しい送電塔が蘇花改に誕生、公募による創意に満ちたデザイン

2020/01/20
台湾電力公司が行った送電塔のデザインに関するコンクールで優秀な成績をおさめた創意あふれる送電塔が実際に建設された(写真)。宜蘭県と花蓮県の県境の新たなランドマークに。(経済部サイトより)
現在、台湾に設置されている送電塔は2万基近く。全長1万3,000キロメートル以上の送電路を支え、発電所で生まれた電気を全国の電力網へとつないでいる。一方、送電塔は人々が電気を使うために存在しているにもかかわらず、しばしば「忌避施設」(施設の必要性は認めるが、自分のいる場所の近くには建てないでほしいと嫌がられる施設)とみなされる。台湾電力公司はこのため、送電塔のデザインコンクールを実施して一般の人たちを参与させた。電力と暮らしがどれだけ結びついているのかを人々にいっそう感じてもらうため、「自分の送電塔は自分でデザインする」よう促したのである。
 
同コンクールは2015年に初めて行われ、参加した50チームから10のプランが賞を受けた。そこからさらに外観、構造と材料、施工と維持運営などの実現可能性を総合的に評価し、凱鋭光電公司の蔡可育副理(副部長に相当)による作品「生」を台湾初のイノベイティブな外観の送電塔とすることに決定した。
 
この送電塔の正式名称は「和仁~漢本線2号電塔」で、省道「台9線」の一部「蘇花公路」の改善工事である「蘇花公路山区路段改善計画(通称:蘇花改)」によって必要となった特別高圧の送電路のために台湾電力公司が建てた送電塔3基のうちの1基。外観が特殊なほか、「蘇花改」の観音トンネル及び谷風トンネルの通風、照明、計器制御、安全施設などで使用される電力を供給。1時間に約23万kWhを送電出来るという。
 
送電塔の高さは48メートル。「生」という漢字のなりたちのイメージ(草が地面から空に向かって伸びる)を表現するため緩やかに湾曲した外観を実現するには、複雑に溶接された鉄骨構造をさらにつなげて全体の形とする必要がある。このためあらかじめ工場で鋼板を正確に切断して立体的に曲げた上で1枚ずつ溶接。それらを宜蘭県(台湾北東部)と花蓮県(同東部)の県境の現場で組み立てた。また橋梁の鉄骨施工業者の協力も受けた。組み立てにかかった時間は既存の送電塔の2倍で、全体と詳細の設計、工場での製作、現場への輸送と組み立てで2年を費やした。
 
設計した蔡可育氏は凱鋭光電公司の設計副理で、国立雲林科技大学(台湾中部・雲林県)の大学院で設計を学んでいた当時から「2007年裕隆日産汽車創新風雲賞」と「2009年育秀盃創意設計大賽」でいずれも金賞を獲るなど数々のコンクールで受賞、現在の業界に進んでからもドイツのプロダクトデザイン賞であるレッド・ドット・デザイン賞で評価されるなど大活躍している。今回のコンクールに応募したのは、送電塔の設計をしたことが無かったため興味を持ったから。台湾電力公司が自分の作品を実際の送電塔として具現化するとは思ってもみなかったというが、蔡さんは、「自分が設計したものの中では、その名のとおりの『大作』だ」と話している。
 
このイノベイティブな外観の送電塔は宜蘭県と花蓮県の県境、和平渓の河口にある。在来線・台湾鉄道の北廻り路線(宜蘭側の漢本駅と花蓮側の和平駅の間)に乗るか、自動車で「蘇花改」(新台9線143K地点)もしくは旧蘇花公路(台9丁線156K地点)を走ればこの美しい送電塔を目にすることが出来る。
 
 

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