2024/05/07

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台湾同性婚合法化の立役者・祁家威さんがドキュメンタリー映画化

2020/01/21
台湾のLGBT権利向上運動の草分けと言われる祁家威さん(写真右)のドキュメンタリー作品を撮影中の張弘榤監督(写真左)。作品では、同性婚の合法化を訴える祁家威さんの姿の他、あまり人に知られていない普段の素顔にも触れている。(張弘榤監督提供、中央社)
張弘榤(ZHANG,HONG-JIE) 氏は、ドキュメンタリー作品を手がける台湾の映画監督だ。過去に制作したクジラ目の動物(クジラ・イルカ)の救援活動に関するドキュメンタリー映画「鯨與象」は、台湾の公共テレビ、公視(PTS)のドキュメンタリー作品を放映する番組「紀録観点」で放送されたこともある。張弘榤監督が、現在手掛けている作品は、台湾のLGBT権利向上運動の草分けと言われる祁家威(チー・ジアウェイ)さんに関するドキュメンタリー作品「黎明到來的那一天(When the dawn comes)」だ。制作費用は、クラウドファンディングを通じて集めている。
 
祁家威さんは、1986年に台湾で初めて実名で、自身が同性愛者だということを告白した人物。30年に渡って、台湾における同性婚の合法化を訴える運動を続けてきた。2017年に台湾の司法の最高機関、司法院大法官会議は、釈字第748号「同性の二人による婚姻の自由に関する憲法解釈」を発表、民法が同性婚の自由を保障していないことは違憲だとして、同性婚の法制化を2年以内に行うよう言い渡した。立法院(国会)は2019年5月、同性婚を合法化する法案「司法院釋字第748號解釋施行法(同性婚特別法)」を可決・成立させた。祁家威さんは一連の運動の発起人で、中心人物でもある。
 
祁家威さんを全く知らなかったという張弘榤監督は、祁家威さんの関係者の報道を読んで、祁家威さんのためのドキュメンタリー作品を制作したいと思ったという。張弘榤監督が祁家威さんとコンタクトを取って間もなく、同性婚の憲法解釈に関する法廷が開かれたため、撮影は祁家威さんの足取りと共に、台湾北部の台北市から南部の高雄市、日本、米国などを訪れ、祁家威さんが訴え続けてきた同性婚合法化への道のりを追いかけるものとなった。
 
張弘榤監督は祁家威さんについて、「大部分の人にとって、『同性婚合法化運動のパイオニア』と言えば、祁家威さんの名前を挙げるだろう。祁家威さんのイメージは、様々なメディアのシンボルと断片的な印象によって構成されており、本当の彼の姿を知る人はわずかだろう」と語った。張弘榤監督のドキュメンタリー作品では、婚姻平等を求めて戦う祁家威さんの他、普段の姿や過去30年来の貢献と議論も収められている。
 
長年にわたってメディアの取材を受けてきた祁家威さんは、自身が同性婚合法化に関する運動の推進者という身分が最も注目されていることを知っているため、張弘榤監督が取材を始めた当初、同性婚合法化運動ばかりを紹介し、個人の生活にはあまり触れなかった。友人へのインタビューや日常生活の中から、まれに本心をのぞかせるだけだという。
 
張弘榤監督はさらに、「祁家威さんがLGBT権利向上のために戦うのは、自分のためではなく、他人の願いをかなえたいと思うからだ。批判を受けたときも、心配するのは他の人のことばかり」だと明かした。
 
そのほか、祁家威さんは過去にHIV感染者を摘発したり、生活が苦しいHIV感染者に対して、消費者金融やサラ金業者の仕事を紹介したりするなど、度々その行動が紛争の種になることがあった。また、祁家威さんが女性の外見を酷評することがあったことから、インターネット上では「仇女(女性を目の敵にする)」と批判されたこともある。
 
張弘榤監督は、「祁家威さんは、自身とその世代に属する価値観を持っているものの、周囲から高い地位につかされたため、みなが高い基準で祁家威さんを判断するようになってしまった。しかし、祁家威さんは30年来ずっと変わらぬ信念を貫いてきただけだ」との見解を述べた。
 
「黎明到來的那一天」のクラウドファンディングでの資金集めは現在も進行中で、3月7日まで募集している。目標金額は80万台湾元(約290万日本円)。

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