2024/05/05

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小説『歩道橋の魔術師』がドラマ化、かつての中華商場を再現

2020/02/19
台湾の小説家・呉明益さんの同名小説『天橋上的魔術師(邦訳:歩道橋の魔術師)』のドラマ化を手掛ける台湾の公共テレビ、公視(PTS)はこのほど、ロケセットの設営やドラマの各シーンなどをまとめた宣伝用予告映像を公開した。ドラマは2021年夏の公開を予定している。(原子映像提供、中央社)
台湾の小説家・呉明益さんの同名小説『天橋上的魔術師(邦訳:歩道橋の魔術師)』のドラマ化を手掛ける台湾の公共テレビ、公視(PTS)はこのほど、ロケセットの設営やドラマの各シーンなどをまとめた宣伝用予告映像を公開した。ドラマは2021年夏の公開を予定している。
 
呉明益さんの同名小説を原作とするテレビドラマ『天橋上的魔術師』は、台湾北部・台北市にかつてあった1980年代の中華商場の歩道橋を舞台にした、9人の子供たちと不思議な「魔術師(マジシャン)」を描いた物語。原作は海外でも翻訳・出版されており、日本、フランス、韓国でも高い評価を得ている。テレビドラマ版は電視金鐘奨(ゴールデン・ベル・アワード)の最優秀監督賞や金馬奨(ゴールデン・ホース・アワード)の最優秀作品賞を獲得した楊雅喆さんがメガホンを取る。
 
物語の主な舞台となる中華商場は、当時台北市民の生活の中心地だった場所だ。1961年に完成した中華商場は30年間、北門の一端から小南門に至るまでの約2キロメートルに及ぶ、連続して並ぶ8棟3階建てのビルの総称である。ちょうど現在の西門町のバス専用レーンの上に存在していた。当時最もモダンな建築物で、専有面積も広くて賑やかなところは、現在の信義商圏(台北市信義区)に匹敵する。
 
撮影チームは1年の歳月と8,000万台湾元(約2.9億日本円)の巨費を投じ、台湾北部・新北市汐止区の敷地面積2ヘクタールの用地に、台湾のテレビドラマとしては史上最大級のロケセットを作り、かつてあった中華商場をそのまま再現した。
 
中華商場の再現に当たっては、美術責任者の王誌成さんが美術チームを率い、2018年からフィールドワークを開始した。中華商場にあった店舗の種類、看板、当時道路を走っていた車種、当時存在していた踏切の詳細、建築物の壁に使われていたタイル、移動式屋台の種類、庶民の暮らし、それに当時設置されていた公衆電話の年代まで細かく研究することから着手した。その過程は膨大で煩雑なものだった。
 
王誌成さんは、「時間は一種の魔力だ。私はその魔力を、映像化しようと試みた。その環境の中に役者たちが入り、そして演技をするのを見たとき、私は現場にいながら全身に鳥肌が立つのを感じた。それはとても美しかった」と振り返る。
 
ロケセットの設営に当たってはスタッフ600人以上を動員した。足場を組んでセットを作り、人の手によって125枚の看板を描いた。絵付けしたタイルは160坪分、テラゾータイルは420坪分、15,000枚を超えた。
 
当時の中華商場にはさまざまな店舗が入っていた。例えば制服専門店、各種の庶民派グルメの店、靴屋、ミリタリーグッズ専門店、レコード店などだ。撮影グループはこれら50近くの店舗や住宅を忠実に再現した。そこには例えば、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の映画『恋恋風塵』(1987年)に出てきた駅舎や線路も含まれている。また、建物の方位、太陽の光が降りそそぐ位置まで当時とそっくりに再現した。再現したのは建築物だけではない。その当時の雰囲気を、生き生きとよみがえらせることに成功した。
 
新北市経済発展局は、同市汐止区に設営されたロケセットについて、完成度が極めて高いことから、教育及び文化の両面で価値を持つと評価している。映画のロケは間もなくクランクアップを迎え、ロケセットも2月末には取り壊される予定。しかし、中華商場は多くの人の記憶に残る思い出の場所であることから、撮影チームたちはクラウドファンディングで資金を調達するなどしてセットを残し、映画を学ぶ学生たちが撮影の練習に使ったり、一般市民がかつての台湾を懐かしんだりすることができる場所として活用できないかと考えている。
 
ロケセットを保存することは、臨時性建築物の許可延長にも関係する。また、ロケセットの保存には少なく見積もっても4,800万台湾元(約1.7億日本円)の運用・維持費が必要になる見込み。
 
18日午後、ロケ現場を視察した新北市の侯友宜市長は、「新北市は映像産業が新北市に影像記録を残すことを支援している。新北市の若者企業支援政策の一環として撮影チームの資金調達を助け、ロケ現場を3か月保存することにしたい」と述べた。
 
新北市経済発展局はまた、撮影チームの資金調達が順調に進み、この場所に文化的な展示・販売イベントを持ち込むことができれば、ロケ現場の撤去は5月ではなく、さらに2か月延びて今年7月になる可能性もあると示唆している。
 

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