2024/04/29

Taiwan Today

政治

中央研究院、新型コロナ簡易検査キット開発につながるモノクローナル抗体の作製に成功

2020/03/09
中央研究院は8日、新型コロナウイルス抗原を認識するモノクローナル抗体の作製に成功したことを明らかにした。15~20分以内で新型コロナウイルスの感染有無を確認できる簡易検査キットの開発につながり、検体検査の効率及び規模を大幅に引き上げることができると期待されている。(中央研究院フェイスブックページより)
台湾の最高学術研究機関(国立アカデミー)である中央研究院(台湾北部・台北市南港区)は8日、検体中の新型コロナウイルス抗原を認識するモノクローナル抗体の作製に成功したことを明らかにした。将来的にはインフルエンザの簡易検査と同様、15~20分以内で新型コロナウイルスの感染有無を確認できる簡易キットの開発が期待される。これにより、検体検査の効率及び規模を大幅に引き上げられる。現在、新型コロナウイルスの診断方法には核酸増幅法(PCR法)が用いられている。これは診断までに平均約4時間を要する上、特殊な機器を必要とする。
 
中央研究院基因体研究中心(Genomics Research Center)の楊安綏研究員によると、新型コロナウイルスの簡易検査キットの開発のカギは、そのウイルス検出試薬が正確に新型コロナウイルス抗原を認識できるかどうかにかかっている。楊安綏研究員を代表とする研究チームは、わずか19日間で7種類のヒトコロナウイルスに含まれるヌクレオカプシドタンパク質抗原について、1ミリグラムサイズのモノクローナル抗体(IgG)46株を作製することに初めて成功した。
 
とりわけそのうち1株は、単一のエピトープに対して極めて高い認識能力を持ち、新型コロナウイルスだけに反応し、重症急性呼吸器症候群(SARS)やMERS(中東呼吸器症候群)、あるいはその他の一般の風邪に似た症状をもたらすコロナウイルスには交差反応しないことが分かった。つまり、これを簡易検査に応用すれば、感染したウイルスが新型コロナウイルスかどうかをより効果的に診断することが可能となる。
 
楊安綏研究員の実験室は、バクテリアファージライブラリから人工的に抗体を合成するプラットフォームを開発し、特許を取得した。このバクテリアファージライブラリの使用や保存はいずれも大腸菌システムを使って操作することが可能で、実験用動物を使う必要がないため、時間や資材、環境負担などあらゆるコストを削減することができるのが強みだ。さらに、AI(人工知能)を使ったコンピュータを組み合わせることで、新しく且つ特異性を持ち、特定の抗原を認識する抗体を大量かつスピーディーに合成できる。こうして作られた抗体は、感染症予防に新たな可能性を与えている。
 
中央研究院の廖俊智院長によると、これは中央研究院の各チームが2月上旬から協力して取り組んできた研究の成果で、その結果、新型コロナウイルスの抗原を認識するモノクローナル抗体を迅速に作製することにつながった。
 
中央研究院では、各研究チームが力を合わせて新型コロナウイルス関連の研究に取り組むと同時に、台湾の学術研究機関のために新型コロナウイルス研究に関する協力のプラットフォームを立ち上げている。今回の研究成果もこのプラットフォームで共有し、新型コロナウイルスの簡易検査キット、治療薬、ワクチンの開発を急ぎ、新型コロナウイルス対策に一丸となって取り組みたいとしている。
 
廖俊智院長によると、楊安綏研究員の実験室は抗体分野の研究で10数年間の経験を持ち、昨年はアフリカ豚コレラの免疫検査を行う装置の開発に成功した。今回の抗体の作製についても「予想より2か月早い目標の達成で、周囲を驚かせた」と評価する。
 
今後は経済部(日本の経済産業省に相当)の協力を仰ぎ、新型コロナウイルスの簡易検査キットのプロトタイプ生産について複数の企業と商談を行う。順調に進めば3~4か月以内に衛生福利部(日本の厚労省に類似)の許可を得て、量産体制に入る。検体検査のスピードを加速させ、大規模な臨床応用ができると期待されている。
 

ランキング

新着