欧州各国では3月以降、新型コロナウイルスの感染が急速に拡大している。人口約1,700万人のオランダでも、すでに感染者１万8,000人、死者1,800人を超えている。
中華民国政府は1日、感染のまん延が深刻なEU加盟国（イタリア、スペイン、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルク、チェコ、ポーランドなど）、イギリス、スイスの11カ国に対し、マスク合計700万枚を寄付することを明らかにした。
オランダ政府の台湾における出先機関（在外公館）であるオランダ貿易暨投資弁事処（Netherlands Trade & Investment Office）は同日、公式フェイスブックページに「最前線で働くオランダの医療関係者は長くサージカルマスクの不足に直面していました。彼らは同じマスクを繰り返し使ったり、工事現場で使われるようなマスクを購入したりしています。台湾が貴重な資源をオランダと共有し、マスクを寄付してくれることに感謝します」、「一緒に協力することで、私たちはこの困難を乗り越えられるでしょう」とするメッセージを投稿した。
オランダ貿易暨投資弁事処のGuy Wittich処長（＝大使に相当）によると、オランダではさまざまな組織でサージカルマスクが足りず、約１か月前にはユトレヒト（Utrecht）市がGuy Wittich処長に対し、台湾で急きょマスクのサプライヤーを探してくれないかと問い合わせてきたことがあった。Guy Wittich処長は直ちに中華民国外交部（日本の外務省に相当）に連絡し、マスクの輸出制限を解除できないか打診した。Guy Wittich処長は正規の外交ルートでも、オランダでマスクの需要が高まっている旨を伝えたが、台湾から具体的な返事を得ることが出来なかった。そんな中、先週になって突然、台湾がオランダにマスクを寄付するという話が伝えられ、Guy Wittich処長は驚きと歓びを禁じ得なかったという。
Guy Wittich処長によると、マスクだけでなく、オランダでは防護服などその他の防疫医療物資が著しく不足している。また、オランダ政府は台湾と、新型コロナウイルスのワクチン、治療薬、医療器材などを共同で研究・開発・生産できることを希望しているという。
オランダと台湾は長年、さまざまな産業や科学技術研究の分野で協力を展開している。2015年6月末、新北市（台湾北部）のウォーターパーク「八仙水上楽園」で粉塵爆発事故が発生した際、オランダの「Euro Skin Bank」（スキンバンク）は当時、同組織としては過去最大規模の寄付活動を発起し、同年7月初めに皮膚提供者（ドナー）から集めた10箱の皮膚を台湾に運び込んだ。これは熱傷患者50人を救うのに十分な数量の皮膚だった。
それから5年後、台湾はオランダに対して数十万枚のマスクを寄付するだけでなく、学ぶに値する感染症対策の手本、感染症まん延による経済への打撃への対処法などを示してくれた。Guy Wittich処長によると、オランダ貿易暨投資弁事処はこの数週間、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ「台湾モデル」について解析するレポートを作成してきた。台湾のやり方を、オランダの各方面に参考にしてもらうのが狙いだ。Guy Wittich処長は「台湾モデル」の最も貴重なところは、「スピーディーな反応」だと評価する。
なお、経済部投資審議委員会の資料によると、台湾が1952年に海外からの直接投資を受け入れるようになってから2019年までの期間、オランダから台湾への直接投資は約354億米ドルに達する。これは全体の約20％を占め、トップだ。2016年から2018年、オランダは3年連続で、台湾にとって最大の直接投資国となった。2019年はトップの座を譲り、2位に転落したものの、その対台湾投資額は米国や日本を上回り、23億米ドルとなった。これは、海外諸国の対台湾直接投資総額の約20.5％を占める。分野で見ると、電子部品が最大となっている。
オランダ貿易暨投資弁事処は先月、国立台湾大学及び財団法人金属工業研究発展中心と協力し、オランダ政府が出資する形で、台湾の洋上風力発電の人材を育成することで一致したと発表した。Guy Wittich処長は新型コロナウイルスをきっかけに、オランダと台湾の技術協力が医療、バイオなどの分野にも広まることを期待している。