2024/05/05

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台湾の医療チーム、新型コロナ患者に有効な漢方薬配合を発見

2020/05/12
国家中医薬研究所は17年前のSARS(重症急性呼吸器症候群)治療の経験をもとに、新型コロナウイルス感染患者14人に独自配合の漢方薬を処方したところ、8~10日間で体内のウイルスを消すことに成功した。完全な治療報告が完成すれば、海外のジャーナルで発表し、台湾における漢方治療の効果をアピールする。(外交部)
新型コロナウイルスが世界各地で猛威をふるう中、台湾では17年前のSARS(重症急性呼吸器症候群)治療の経験をもとに、新型コロナウイルス感染患者14人に独自配合の漢方薬を処方したところ、8~10日間で体内のウイルスを消すことに成功した。
 
台湾最大の中国医学の研究所である衛生福利部(日本の厚労省に類似)国家中医薬研究所によると、台湾では今年1月に新型コロナウイルスの感染拡大が確認されて以来、衛生福利部中医薬司と国家中医薬研究所が中心となって、新型コロナウイルス患者の治療を目的とした漢方薬と西洋薬の併合療法ガイドラインの作成に取り組んでいる。
 
中国医学では通常、患者の個別の状況に応じて適切な漢方薬を処方する。このため、西洋医学で使用するレムデシビルやキニーネといった治療薬のように、服用人数や用量などから一致した薬物療法ガイドラインを作成するのは容易ではない。このため国家中医薬研究所の蘇奕彰所長が率いる研究チームは2003年のSARS(重症急性呼吸器症候群)の経験と、関連の国際文献を参考にした上で、新型コロナウイルス患者を「軽症」、「重症」、「やや重症」、「回復期」の4段階に分け、それに応じた4種類の処方を制定した。また、実際のウイルスの変異に基づいて処方を調整できるとした。
 
蘇奕彰所長は、「現時点でこの漢方薬の配合は、中央感染症指揮センター(新型肺炎対策本部に相当)が公表する暫定ガイドラインに採用されていないため公開することはできない」としながらも、「中央感染症指揮センターの暫定ガイドラインに採用されれば直ちに公開する。製薬会社と協力して必要な認証を得れば、新型コロナウイルスのまん延が深刻な国々を助けることができるだろう」と意気込んでいる。
 
研究チームは4月3日より、台湾北部・台北市にある三軍総医院、台湾中部・台中市にある台中栄民総医院と協力し、中国医学と西洋医学の併合療法による新型コロナウイルス患者14人の治療をスタートした。治療の重点としては、西洋医学が症状に対処する支持療法であるのに対し、中国医学は体内のウイルスを取り除くことと、体内の免疫機能の安定を図ることを目的としている。
 
併合療法による治療を受けた患者14人は、漢方薬の処方によって熱が下がり、心拍や血圧も明らかに安定した。また、そのうち12人は治療開始からわずか8~10日間でウイルスが体内から消え、3回の検体検査で陰性反応を示して退院した。副作用は一切出なかった。残り2人は最近感染が明らかになった比較的新しい患者で、服薬の期間が短く、現在も治療中だという。
 
研究チームはまた、漢方薬の成分の一部に、新型コロナウイルスのスパイク・タンパク質と結合し、ウイルスと人体の細胞との結合を阻止する働きがあることを突き詰めた。簡単に言えば、新型コロナウイルスのスパイクと呼ばれる突起が「鍵」となり、人体の細胞中の受容体(すなわちACE-2)という「鍵穴」に入ってウイルスを増殖させるのだが、漢方薬の成分の一部はこの「開錠」を邪魔する。このためウイルスの増殖が繰り返されることを防ぐのだ。
 
この独自配合した漢方薬は、体内のウイルスをスピーディに排除するだけでなく、重症患者の体内でサイトカイン放出(サイトカインストーム)が発生することを抑制する働きを持つ。過剰な免疫反応の発生を避け、上述のようにウイルスの増殖を防ぐため、ワクチンとほぼ同様の効果を得ることができる。今後、完全な治療報告が完成すれば、海外のジャーナルで発表し、台湾における漢方治療の効果をアピールしたい考え。
 
中医師公会全国聯合会(=漢方医による全国的な同業者組合)の柯富揚理事長によると、漢方治療によるガイドラインはすでに衛生福利部の審査を通っており、近く中央感染症指揮センターに提出され、専門家チームによって議論されることになる。同会では、新型コロナウイルスの治療ガイドラインに漢方治療が導入されるよう働きかけ、より多くの患者の治療に適用したいと考えている。
 

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